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 キャッシュカードを狙った特殊詐欺事件が全国的に後を絶たない中、長野県警は犯行直後の摘発に力を入れている。怪しい電話や実際に被害があった地域で一斉に捜索。カード受け取り役の「受け子」を見つけ、被害を未然に防止したり被害金が戻ってきたりしたケースも。県警は「一刻も早い通報を」と呼びかける。

 「詐欺の犯人を捕まえたところ、あなたの個人情報が流れていた。キャッシュカードや通帳は無事か」

 8日午前10時ごろ、佐久市内の80代女性宅に警察官を名乗る男から電話がかかってきた。カードをだまし取るための「予兆電話」だ。不審に思った女性は佐久署に連絡。すぐさま県警本部や同署などの捜査員数十人が一斉捜索を始めた。

 程なくJR佐久平駅構内をスーツ姿でうろつく不審な男を見つけた。事情を聴いたところ、所持品などから今月3日に愛知県岡崎市で起きた事件に受け子として関わった疑いが浮上。その日のうちに住居不定の無職の男(33)を詐欺の疑いで逮捕した。

 最近の特殊詐欺は、あらかじめ受け子を待機させた地域に狙いを定めて詐欺電話をかける手口がほとんどとされる。カードの暗証番号は「カードを交換するのに必要」などとして聞き出し、ひとたびカードが受け子に渡ればすぐに貯金が引き出されてしまう。県警の「逃げられる前に捕らえる」作戦が功を奏した瞬間だった。

 以前は電話が複数回かかる手口が多く、被害者に「だまされたふり」をしてもらうことで現金やカードの受け渡しの際に摘発できた。ところが、最近は通報の隙を与えないよう受け子が通話中に被害者宅を訪れる犯行が目立つという。

 このため県警は、通報直後に周辺を「人海戦術」で捜す作戦にシフトした。4月以降、受け子を逮捕した15件のうち佐久の事件を含めた5件の逮捕は当日か翌日(6月11日現在)。引き出したばかりの現金を所持していて被害者に戻ったケースもあった。

 いずれも詐欺に気づいてすぐの通報が逮捕につながった。県警捜査2課の平林克彦次長は「時間が経てば犯人が捕まっても被害金は戻らないことがほとんど。犯行の未然防止や被害回復のためにも、詐欺だと思ったらすぐに110番してほしい」と呼びかける。

 警察庁によると、キャッシュカードを狙う詐欺の4月の認知件数は、特殊詐欺事件全体の半分以上を占めた。「カードが犯罪に悪用されている」などとうたって手渡させたり、カードを封筒に入れさせて隙を見て別の封筒とすり替えて盗んだりするのが主な手口だ。県内でも7割を占め、5月の認知件数は37件。昨年同月の2・6倍だった。(里見稔)