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 酒と会話を提供するスナックが、コロナ禍で苦境に立たされている。記者(23)が茨城・水戸の歓楽街の店のカウンターに座り、夜の社交場で生きる人たちの声を聞いた。(小島弘之)

 「今日も一日、空元気。しょうがないじゃん」

 水戸市大工町にあるスナック「モンキー ポット」。10日午後11時、近所のスナックのママ(52)が、店主の武美奈子さん(56)にこう漏らしながらカウンター席に座った。客が来ないので、気晴らしに飲みに来たという。

 「東京アラート。おいしそうなお菓子みたいね」

 一緒にテレビを見ながら、ママは言った。

 武さんは、クラブのホステスなどを経て、23年前に店を構えた。今回のコロナ禍で「全ての明かりが消えた大工町を初めて見た」。

 客は、3月上旬から減り始め、4月は前年の1割ほど。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、茨城県内に約1千あるバーやスナックは4月18日から約2カ月間、県に休業を要請された。

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 武さんの店も、4月18日から休んだ。昨年4月は98万円あった売り上げは、今年は36万円。5月22日から思い切って店を開けた。感染防止策として、七つあるカウンター席を四つに減らし、網戸がついた入り口を開放して換気を続ける。

 だが、客足は戻らない。この日も店はいつも通り午後9時に開店したが、2時間は従業員2人とグラスを磨いたり、テレビを見たり、スマホを触ったり。

 「国の(特別定額給付金の)10万円の給付だけじゃ焼け石に水ですよ」

 パートで働く40代の男性従業員は、こうため息をついた。家賃や税金の支払いがあり、不安が続く。

 武さんはこの間、店と従業員を守るため、資金繰りに奔走してきた。

 銀行から100万円の融資を受け、国の持続化給付金100万円、県の休業要請協力金20万円を受け取った。大家の厚意で4~6月分の家賃は半額になった。

 だが、数年前の改装費のローンや人件費などで、月20万円超の経費がかかる。

 耳に入ってくるのは、同業の廃業の知らせばかり。「30軒以上かな。先が見えないから、明日は我が身」

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 コロナ禍で、改めて夜の社交場について考えた。

 「スナックは会話が一番大事なの。仕事や家庭の愚痴なんかを直接話す場所だからね」。だが、「3密」を避けることが求められる。常連客には「来てください」とは言えず、LINEなどで約400人に「お元気にされていますか?」とメッセージを送った。

 日付が変わった午前0時半前、2軒目だというなじみの男性客が姿を見せた。設備工事業を経営する北條秀康さん(46)。

 会社は、中国から輸入した部品を扱っていたため、3~6月の売り上げは半減した。自らも苦境だが「単純にお店が心配で」と足を運んだという。

 午前3時、閉店。この日の客は2人だけだった。

 東日本大震災で店を休んだ時は、不安でかなり落ち込んだ。だが知人からのカンパを励みに続けられた。

 武さんにとって、今回のコロナ禍、不安を感じつつも、どこか腹は据わっているという。

 かつて入院した時、リモートで客と話したこともある。でもなじまない。スナックは「対面してこそ」。そして、お客さんに「明日もまた頑張ろう」と思ってもらう場所だと思う。

 「1人でも足を向けてくれるお客さんがいる限り、待っていたい。生涯現役。この店で死ねれば本望」