伊藤喜之
拡大する休業要請に応じず営業し続けていた大阪・ミナミのショットバー=2020年5月7日午後10時36分、大阪市中央区(画像の一部を加工しています)
新型コロナウイルスに伴う休業要請に応じて大半の店が営業を自粛したが、中には要請に従わなかった店も存在した。緊急時における「営業の自由」とは。
5月初旬、大阪・ミナミ。大阪府の時短営業の要請に従い、多くの飲食店が店を閉じる午後8時、雑居ビルにある一軒のショットバーが店を開けていた。
「閉めようかと迷うことも一切ないですね」
カウンター席が5席だけの店内で、男性店主(33)が言った。コロナの感染が拡大する中、一日も休業していない。店の入り口は開けて換気はしているが、接客中にマスクも着けない。
「地球上で最後の店になっても営業は続けますよ」
少しおおげさに聞こえた。なぜ、そこまでこだわるのか。何度か店に通い、少しずつ尋ねていくと、その理由がわかった。
高校時代から周囲と趣味が合わず、友だちはいなかった。会社員時代の元上司に勧められ、30歳でバーを開いた。1日1人しか客が来ない日も続いた。だが、同じビルの他店から流れてくる客が次第に増えた。バーという小さな空間では、うまく人間関係が築ける気がした。
「この場所に救われた。来てくれるお客さんがいる限り、店は閉めない」。コロナ禍前から1年365日ほぼ休みなしで営業を続けているという。
店主の生き方は理解できた。ただ、こうも思った。今、抗(あらが)う相手は休業を要請する行政だけではない。新型コロナという感染症だ。客や従業員が感染して死者が出たら、どうするのか。
「冷静にみて、うちの客層と同…
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朝日新聞社会部