旭堂南海=講談師
拡大する埋蔵金探しに挑んだ故・鈴木盛司さん。秘密の間歩に案内してくれた=2008年
「多田銀銅山の埋蔵金伝説」を追って、鈴木盛司(もりじ)氏を訪ねたのは12年前のこと。兵庫県猪名川町を中心に広がる多田銀銅山には、豊臣秀吉の埋蔵金伝説がある。その額、なんと4億5千万両! 1973年の閉山と共に、一獲千金を目論(もくろ)む山師たちが大勢やってきた。鈴木氏もその一人だった。
年を経るごとに、1人去り……2人去り……ついには、鈴木氏ただ一人に。さぞや情熱の塊のようなトレジャーハンターだろうと思ったが、対面すると意外にも寡黙な、達観という言葉がピッタリな世捨て人のような70代の老爺(ろうや)だった。必死に「埋蔵金発見はロマンですよ!」と持ち上げること数時間。根負けしたのか、「長年1人で掘り続けて来た秘密の間歩(まぶ)(鉱山の坑道)へ案内しても良いが、足が悪いのでなぁ」。すかさず、私は「背負いますよっ!」。親にさえしたことがないのに。金の亡者は間違いなく私であった。
その4年後に鈴木氏は亡くなったと聞いた。ついに穴を掘って向こう側まで行ったかぁ。今頃は秀吉と仲良く酒でも酌み交わしているだろうと私は思った。実は鈴木氏を背負って山道を歩き、間歩の入り口が見えた時、「南海君、もうすぐ出るんだ……後を君に頼みたい」と言われたのだ。私の返事?……内緒。ヒントを一つ。この原稿を書いている時点で、特別定額と持続化の給付金がいつ入るか待ち続けているのであります。
拡大する姫路城の「お菊井戸」=2008年、兵庫県姫路市
穴つながりと言うと妙だが、「姫路城のお菊井戸」も思い出深い。10枚1組のお皿の1枚を隠されたお菊が、殺されて井戸に投げ込まれる。以来、夜な夜な井戸からお菊の幽霊が出てきて皿を数えるが、9枚まで数えて「悔しい」と言う有名な怪談だ。だが、お城の「お菊井戸」は実は観光名所作りのために名付けられた、という話があると聞いてたまげた。
その姫路では例年、お城まつり…
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