[PR]

 緊急事態宣言が解除された後も新型コロナウイルスの感染者が相次ぐ東京都内では、リスクにさらされながら自治体職員や作業員がごみ収集を続けている。「いつもありがとうございます」。時にごみと一緒に置かれている感謝の手紙が救いだが、巣ごもりで増えたごみや不十分な分別には手を焼いている。

破裂するごみ袋、同行ルポでわかった収集の感染リスク

 5月末、練馬区の清掃事務所の可燃ごみの収集に同行した。「パン、パン、パン」。収集車がごみをプレスするとごみ袋が破裂し、水しぶきが飛んだり、ほこりが巻き上がったりする。近くにいるとその度にどきっとする。ごみ集積場には使用済みのマスクがそのまま置かれていたり、本来は別に回収する瓶や缶などが捨てられたりするのも目にした。

拡大する写真・図版感染の恐れのあるごみは、手ではなく板で拾って収集車へ運ぶ=2020年5月27日午前8時55分、東京都練馬区、石井徹撮影

 収集員はゴム手袋はしているものの、感染の恐れなどがあるごみには直接触れず、2枚の板で器用に拾って収集車に入れていく。「感染も心配だが、ごみのかさが増しているので腰がつらい」。この道20年の鈴木政宏さん(45)は、いつも以上に疲れるという。ごみが増える年末のような状態がずっと続いているからだ。腰を痛めて休む同僚も多い。

 同区の4月の可燃ごみ収集は前年より1割以上増えた。特に使い捨てのプラスチック類や衣類、食べ残しの食材が増えている。東京二十三区清掃一部事務組合によると、2月24日~5月3日に23区内の家庭から出た可燃ごみは33万6983トン。昨年同時期より4・9%増えた。

感謝の手紙続々 毎朝見送りにくる親子も

 励みになるのは、ごみと一緒に置かれる感謝の手紙だ。「ごみの量も増え、感染リスクもある中、いつも収集ありがとうございます」「くれぐれも気をつけてください」「感謝でいっぱいです」など200通以上になる。清掃事務所から収集車が出発する午前8時に毎日見送りに来る親子もいる。「頑張ろうという気持ちになる」と鈴木さんも笑顔を見せる。

拡大する写真・図版江東区清掃事務所に保管されているメッセージ=2020年5月18日午前9時19分、東京都江東区、水戸部六美撮影

 江東区でも、4月中旬ごろからごみ集積場に手紙が置かれるようになった。「毎日キケンで重要なお仕事を感謝しております」「安全なごみの出し方を心がけます」など100通以上。中には手作りマスクやあめ玉が同封されているものもあった。江東区清掃事務所の綾瀬邦雄所長(51)は「今までになかったこと」と喜びを語る。

 中央区の中央清掃事務所では、収集員の休憩スペースに寄せられたメッセージ約60通がはられている。「袋は2重にしました。今日もご安全に!」「雨の日も風の日もいつもいつもお世話になります」

拡大する写真・図版中央清掃事務所の休憩スペースに貼られたメッセージ=2020年5月18日午後4時43分、東京都中央区、水戸部六美撮影

 技能主任の高島稔さん(51)はメッセージを見ると「自分たちの仕事を見てくれている人がいる」と励まされるという。収集中に一番困るのは、可燃ごみに瓶や缶が混じっていることだ。取り除くためにさわる必要があり、感染リスクを感じるという。

 環境省は、ごみが散乱しないようしっかり縛って封をする、破裂しないようごみ袋の空気を抜く、生ごみは水を切るなど、家庭ごみの適切な捨て方をチラシで呼びかけている。(水戸部六美、編集委員・石井徹

拡大する写真・図版新型コロナウイルス感染防止のため、正しいごみの捨て方を呼びかける環境省のチラシ

お笑い芸人兼ごみ清掃員・滝沢秀一さん「ごみは人の心を表す」 

 お笑いコンビ「マシンガンズ」で活動の傍ら、東京23区でごみ収集の仕事を続ける滝沢秀一さん(43)に聞いた。

拡大する写真・図版お笑い芸人でごみ清掃員の滝沢秀一さん

 新型コロナウイルスがはやり出した3月下旬は、マスクを手に入れられず、個人的な対策としてかっぱを着て、粉じん用のマスクとゴーグルを洗って使った。

 ごみの量は外出自粛要請以降すごく増えた。これを機会に断捨離した人で、普段の1・5~2倍ぐらいの感じ。カラスには天国。せっかくきちんと出してくれても、通勤の人がいないからカラスが集積場を荒らす。

 マスクのごみが注目を浴びたが、ペットボトル、缶も同じ。コロナウイルスはプラスチックや金属の上で何日、何時間生き残るとか言われていた。自分の身は自分で守るしかない。

 ごみ収集車の横にいると回転板を回す時のほこりがすごい。ウイルスがあれば、髪の毛に絶対浴びているなと思う。自宅療養の人もいるので心配だった。ごみが原因かどうかは不明だが、実際に神戸市の収集員は新型コロナに感染している。

 ネットなどでごみ収集の実情を発信して以降、「いままで気づきませんでした」などのコメントをもらい、気をつけてくれる人が増えた。

 ごみは人の心を表している。その人がごみだと思ったらごみになる。フリーマーケットで捨てようと思ったものでも違う人には価値を持つ。「愛しているものなら命がなくなるまで使え」という考え方が大事だ。使い捨てプラスチックは最も減らすべきだ。

 いまだに「大量生産・大量消費」を信じている人がいるが、時代は変わった。ものを持つことに飽き飽きしている人は多い。僕なんか、服もレンタル。家にものを置きたくない。

 断捨離してみて、余計なものがいっぱいあふれていることに気づいた人は多い。コロナ危機は、いまの生活を見直し、新しいステージに行くためのきっかけになるのではないか。