世界中で新型コロナウイルスによる感染症が広がり、深刻な影響が出ている。ウイルスは単独では生命活動ができず、他の細胞に寄生することで遺伝情報を増殖し、子孫を残していける。そんなウイルスが持つ多様性について、富山大学の入試問題を題材に、駿台予備学校の佐野芳史・生物科講師に解説してもらった。
富山大学2019年度前期・理科(生物)抜粋
あるウイルスの遺伝子の塩基組成を調べたところ、アデニン(A)、ウラシル(U)、グアニン(G)、シトシン(C)から構成されており、Aの数とUの数、Gの数とCの数がそれぞれ一致していた。塩基の総数は96500個で、そのうちグアニンが16400個であった。
このウイルスの遺伝子の特徴として、次のいずれの可能性が最も高いと推測されるか。また理由を説明しなさい。
(ア)1本鎖DNA (イ)2本鎖DNA (ウ)1本鎖RNA (エ)2本鎖RNA
解答(エ)
AとUの数、GとCの数がそれぞれ一致していることからそれらが対になった2本鎖であり、Uを含むことからRNAと推測できる。
ウイルスの遺伝を考える
人間を含むすべての生物の基本単位は細胞です。大腸菌のような単細胞生物も動物や植物のような多細胞生物も、細胞でできていることは同じです。細胞は、内部にDNAとRNAの両方をもち、自ら必要な物質を合成して、細胞分裂で増えます。
細胞内のDNAは2本鎖構造で、遺伝子(細胞の部品の設計図)を、細胞から細胞へ、親から子へと伝えます。遺伝子全体をゲノムといい、細胞はDNAをもとにDNAを合成してゲノムを複製します。細胞のRNAは、遺伝子をもとにたんぱく質(細胞の部品)をつくる際にはたらきます。DNAをもとにRNAを合成するのが転写、RNAがはたらきたんぱく質を合成するのが翻訳です。翻訳のときにたんぱく質の設計図の写しとなるRNAがmRNAです。
ウイルスは細胞ではありませ…

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