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 新型コロナウイルスの感染が全国で拡大する中、医療従事者はこれまで予防や治療に取り組んできた。奈良県医師会の安東範明副会長(59)に聞いた。

 ――県医師会は県とどのように協力しているのか

 週1回、県や県医師会、帰国者・接触者外来がある主要な病院など計200人以上が参加してオンライン会議をしている。医療現場の問題とニーズを県に伝え、意見は柔軟に聞き入れてもらっている。

 PCR検査の拡大もずっと県に求めてきた。4月中旬から始まったドライブスルー検査は県医師会が強く求めたもの。検査のために県医師会からも医師を派遣しており、診療所を休んで出てくれる医師もいる。

 ――PCR検査をめぐっては様々な議論があった

 医師が必要と判断したPCR検査は全件実施するべきだ。「帰国者・接触者外来」という名前に表れているように、国としても最初はPCR検査を広げたくないような印象があった。県も同じだ。私のクリニックでも感染が疑われる患者がいた時、帰国者・接触者相談センターに報告したが、「基準を満たしていないから検査につなげません」と言われたことがあった。

 また、当初は各医院からセンターに電話する際に、回線が混雑してつながりにくかった。それを県に伝えたところ、5月1日から、医師が必要と判断すれば保健所に直接ファクスで依頼し、100%検査につなげてもらえる体制になった。これまでのところ、行政と医療現場との連携は非常にうまくいっていると思う。

 ――休業要請や外出自粛の緩和に向け、県は人口10万人あたりの新規感染者数が直近1週間で0・5人未満などとする目安を設けた

 とりあえず妥当な目安だと思う。大事なのはPDCAサイクルを常に働かせること。夏場に感染の勢いが落ちるかはまだ誰にもわからない。何しろ新しい感染症で、初めての対応だ。とにかくやってみて、その上ですぐに検証・改善を図る必要がある。

 ――県内の医療体制をどうみるか

 県立医大付属病院(橿原市)や県総合医療センター(奈良市)、南奈良総合医療センター(大淀町)、県西和医療センター(三郷町)などの公立病院が中心となって頑張っている。幸運なことにクラスターも発生しなかった。

 一方で、コロナ以外の医療体制が犠牲になっている。病床とスタッフの数は限られているので、コロナ以外の患者を転院させたり、手術を延期したりして対応している。決して余裕があるわけではない。結果として感染者数は用意した病床数を超えなかったが、一時は超える瀬戸際にあった。

 ――今後の課題は

 患者の入院や搬送を調整する組織、コーディネーターの設置が求められている。奈良県ではいまは各保健所がやっているようだ。だが、保健所は検査の受診の調整もあるし、業務が膨大になる。

 行政改革の一環で、全国的に保健所の数が減らされてきた。奈良県の場合は桜井と葛城の保健所が2015年に合併して中和保健所になり、六つから五つになった。全国に比べればそれほどの減少ではないが、桜井・葛城の担当地域は広いので、現場が逼迫(ひっぱく)していないか心配している。

 現代は経済活動がグローバル化しており、今後いつ新たな感染症が入ってきてもおかしくない。病床や医療従事者、人工呼吸器やECMO(エクモ)(体外式膜型人工肺)などの医療機器、マスクや防護服などの確保計画を、平時から都道府県ごとに立てておくことが大事だ。急性期病床の削減を進めようとしている地域医療構想は見直す必要がある。ギリギリの医療体制だと、今回のような有事の際に逼迫するので、平時から一定の余裕が求められる。(聞き手・根本晃)

     ◇

 あんどう・のりあき 1960年生まれ。静岡県出身。奈良医療センター(奈良市)神経内科医長兼リハビリテーション科医長を経て、安東内科医院(橿原市)院長。2017年から県医師会副会長。