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 岡山市北区国体町1丁目の「カフェ・定食ぽん太」には、客同士が食券を融通し合うサービスがある。食券は購入するほか、店を手伝い、もらうこともできる。ところが、この仕組みが知られていないため、店内のボードには「誰かのために」と寄せられた善意の券がいっぱい。店主は「苦境の人に今こそ使って欲しい」と呼びかけている。

 食券サービスはオープンの2018年9月から始めた。1枚850円。京都や東京の飲食店を参考に、皿洗いや配膳、箸袋のスタンプ押しなどの「労働」1時間で1枚を渡す。

 食べる必要がない人は他人に譲ることができ、「恩送り板」と呼ばれる店内のボードに貼り付ける。誰かに使ってほしいと貼る人がいる一方、「この店の味を知ってもらいたい」と寄付する人もいる。

 券の利用は月2枚。使いたい客は店側に申し出るだけ。「気持ちが沈んだ時の気分転換にも使って欲しい」と店主の横田都志子さん(54)は狙いを話す。だが想定外なのは、貼られた券がいまいち利用されないことだ。現在も40食分が貼られたままで、「知名度不足かも」と横田さん。

 《おなかがすいたらイライラするから、とりあえず1食たべよう》《初テゴ(手伝い)の中3です。よかったら食べてください。少しでも笑顔になっていただけますように》。恩送り板にはそんなメッセージが添えられている。どんな人が寄付しているのか。

 玉野市の女性(71)は店で働き、食券を寄付する「常連」だ。20年近く前に夫と死別し、子も独立した。趣味の登山や楽器演奏のボランティアの一方、1年半ほど前から月2回のペースで皿洗いや盛り付けなどを続けている。

 「背筋を伸ばして生きて、これで良かったと思える人生にしたい」。新型コロナウイルスの影響で手伝いの受け入れは中止されているが、再開されればまたやりたいという。

 横田さんは新型コロナでバイトが十分できなくなるなどした学生の苦境が気になる。「困っている人は遠慮なく使ってほしい。世の中捨てたものではないと思ってもらえれば」と話す。

 ぽん太(080・5626・1453)の営業は午前7時~9時半、午前11時~午後2時、土日祝日は通し営業。毎週木曜と第3日曜、1、17日が休み。(菅野みゆき)

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