9月入学論争で見えた宿題 「教育の国際化」果たすには
コロナQ&A(海外編) 回答:小林りん・ISAKジャパン代表理事
Q 新型コロナウイルスの影響で議論が起きた「9月入学」の導入見送りが決まりました。教育の国際化につながると期待する声もありましたが、実際はどうなのでしょうか。
A 海外から教員や生徒を募る場合、9月入学が適しているのは事実です。私たちの高校ユナイテッド・ワールド・カレッジ(UWC)ISAKジャパンでは入学時期を8月下旬とし、現在は80カ国200人の生徒が学んでいます。でも、それをすぐに全国一律で導入することには慎重であるべきだと考えています。
9月入学は、学習の遅れを取り戻すためという意見もありますが、第2波、第3波で再び休校を強いられる可能性を考えれば、いま膨大なコストをかけて移行することにどれだけ意味があるのか疑問だからです。
教育の国際化に向け、確かに他国の学校と行き来はしやすくなるでしょう。でも、日本の大学生へのアンケートでは、留学をためらう理由で最も多いのは経済力です。さらに、語学力の不足と就職活動への影響が続きます。留学の資金援助や英語教育の強化、企業による一括採用を変えることなどを同時に進めなければ劇的な変化は望めません。
海外の研究者や留学生を呼び込むことも日本の教育の国際化には欠かせませんが、近年の日本の高等教育機関は若手の正規ポストが減り、研究者にとって魅力が低下しています。他国の人が魅力を感じるよう、年功序列ではなく、実力で評価される仕組みが必要です。こうしたことを包括的に時間をかけて議論し、教育の真の国際化に向けた対策を計画的に実施していくべきだと考えます。(聞き手・小早川遥平)
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小林りん(こばやし・りん) 長野県軽井沢町にある全寮制国際高校ユナイテッド・ワールド・カレッジ(UWC)ISAKジャパンの代表理事。社会に変革を起こす「チェンジメーカー」の育成を建学の理念とする。
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