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コロナQ&A(海外編) 回答:大西一成・聖路加国際大大学院准教授

新型コロナウイルスをめぐる諸外国の動きは様々です。記者が日々の取材をするなかで気になったテーマを、識者に尋ねました。

 Q 人と一定の間隔を保つ「ソーシャル・ディスタンシング」(Social distancing)という言葉がすっかり定着しました。一方で、「ソーシャル・ディスタンス」(Social distance)という言葉も頻繁に耳にします。両者に違いはあるのでしょうか。

 A ソーシャル・ディスタンシングは感染予防に特化した言葉で「感染拡大を防ぐために物理的な距離をとる」との定義がされています。医学論文では2006年、効果的な薬もワクチンもない感染症のパンデミック(世界的な大流行)の論文で初めて使われています。日本語訳としては「人的接触距離の確保」がわかりやすいと思います。報道などでは「社会的距離」との訳もよく見かけます。

 一方、ソーシャル・ディスタンスは、人間の心理的な距離を示して使う言葉として1940年代以降、子どもの社会性に関する研究などで使われるようになりました。黒人やエイズウイルス(HIV)感染患者への偏見から、社会的、心理的に彼らとの接触を回避する現象を表す言葉として使われたこともあります。

 二つの言葉は学術的には大きく違いますが、新型コロナの流行の中では混同して使われ、ソーシャル・ディスタンスが人との物理的距離の意味で使われることが日本でも多いようです。世界保健機関(WHO)は意味を明確にするため「フィジカル・ディスタンシング」(Physical distancing)に言い換えました。

 ソーシャル・ディスタンシングはテレワークや3密を避けることも含みます。もちろん、それだけでなく、きちんとマスク着用と手洗いをし、せきエチケットを守ることが大切です。(聞き手・今村優莉)

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 大西一成(おおにし・かずなり) 聖路加国際大大学院准教授。専門は環境疫学、公衆衛生学など。気候変動などの環境変化が人体に及ぼす影響について、原因と評価、対策まで異分野を融合させた研究を行っている。著書に「マスクの品格」。