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 新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出自粛要請は、「感染者ゼロ」が続く岩手の観光地も一変させた。緊急事態宣言の解除で観光・宿泊施設は徐々に営業を再開しているが、思うように客足は伸びていない。「withコロナ」の時代の観光のあり方について模索が続いている。

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 新型コロナウイルスに伴う県境をまたぐ移動の自粛が全面解除された19日。県内外から観光客を呼び込もうと盛岡市でセレモニーが開かれた。最後まで残っていた東京や北海道など5都道県との移動制限もなくなり、出席した達増拓也・岩手県知事は「感染対策を徹底しながら、オール岩手で取り組もう」と訴えた。

 5月25日には緊急事態宣言が全国で解除され、県は5都道県を除いて、往来の自粛を求めない方針を示した。各地の観光地や宿泊施設も営業を再開し始めたが、足踏み状態が続く。

 「客足はあまり戻っていない」。花巻市内で四つの温泉ホテルなどを経営する「花巻温泉」の及川悟・総合予約部長(45)は話す。今月1日から2施設で営業を再開。新規予約も入り始めたが、今のペースだと6月の売り上げは前年比85%減と予測している。

 「移動自粛が全面解除されても予約がどっと増えるわけでもない。この厳しさはしばらく続く」と及川さん。訪日外国人客など団体客は大幅に減っており「個人利用しやすいプランを考えていく必要がある」。

 県によると、県内153の宿泊施設における2~6月の予約キャンセル数は計41万2千人分。新規予約が入らない分も含めて約65億円の減収となる。昨年岩手を訪れた外国人観光客数は過去最高の46万4千人だったが、コロナ禍で岩手の空の玄関口・花巻空港の国際線は当面運休が続く。

 「見たこともない数字だった」。盛岡市のホテルニューカリーナの尾形朋哉・宿泊支配人(47)は3~5月の売り上げに目を疑った。前年比8~9割減で過去最低になっていた。

 打開策の一つがリモートワーク向けのプランだった。午前8時~午後8時の最大12時間、WiFi完備の部屋を最安2500円で利用できる。5月下旬から始め利用はまだ10件程度だが、「使わない部屋を寝かしておくよりも、少しでも利用客の増加につなげたい」と尾形さん。

 逆風のコロナ禍だが、新たな観光スタイルも生まれようとしている。

 明るいBGMが流れるなか、野田村のイメージキャラクター「のんちゃん」が山道を登っていく。村の観光協会が5月からSNSで動画の投稿を始めた、バーチャル旅行の一コマだ。

 コロナで村へ来られない人に代わり、のんちゃんがお出かけスポットを巡る企画。ホームページでリクエストを募り、これまで20カ所以上を動画に収めた。

 「懐かしい場所!」「景色を見ながら、思わず涙が出てしまいました」。村出身の県外在住者を中心に反応が寄せられる。閲覧回数はそれぞれ計1千回程度。それでも観光協会にとっては「上々」の数字で、温かなメッセージに確かなつながりを感じている。

 企画した北田晴子さん(40)は「帰省できない人や、来たくても来られない人も動画で楽しんでもらえるとうれしい」。村のことを知り、足を運んでもらうきっかけになることを期待している。(御船紗子、太田原奈都乃)