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 新型コロナウイルスの影響で、19日に約3カ月遅れで開幕したプロ野球。史上初の無観客で、選手の間でも感染防止策が取られた。それでも「ようやく楽しみができた」というファンたちが、球場の外で思い思いに楽しんだ。

 選手たちは新しいスタイルで試合に臨んだ。ホームランを打った選手の出迎え方も、これまでとは違う。ヤクルト―中日が行われた神宮球場(東京都)では、中日のダヤン・ビシエド選手が一回、右翼席に豪快な一発を放った。今季の12球団最速本塁打を記録し、ベンチ前でチームメートから祝福を受けた。手を合わせず、数十センチの距離を保ったままの「エアタッチ」。それでも、ビシエド選手は笑顔だった。

 ウイルスの感染を防ぐため、現場では日本野球機構(NPB)が作成しているガイドラインに沿って対応している。素手でふれあう行為を控え、ベンチでは選手同士が間隔を空けて座る。各球団が自主的に対策を立てており、開幕戦ではベンチの監督らがマスクを着用して采配を振るい、球審もマスク姿だった。

 巨人―阪神があった東京ドーム周辺には、試合前からレプリカユニホームを着たファンが姿を見せた。阪神ファンの会社員男性(44)は大阪市から駆けつけた。都内に住む巨人ファンの友人(36)と記念撮影し、「無観客は寂しいけど、やっと第一歩。甲子園球場で野球を見る日を楽しみにします」と話した。

 ガラスドア越しに球場内の大型スクリーンが見える入場口前には、十数人が集まっていた。会社員の三井名薫さん(44)は、巨人の坂本勇人選手が打席に入る際に流れる映像を見に来たという。「『野球ロス』でしたけど、ようやく楽しみができました」。最初の打席でアウトを示す赤いランプがつくと「あー」と肩を落としたが「見られてよかったです」と球場を後にした。

 雨が降り続けた神宮球場。千葉県船橋市の会社員小野田一成さん(57)は「いてもたってもいられなくて」と午後3時に到着した。球場の通用口に応援する中日の選手が姿を見せるたび、「頑張って下さい」と声をかけた。試合が近づき、場内アナウンスが球場外まで響くと、「音だけでも、いよいよという気分になるね」と笑顔を浮かべた。

 ヤクルトファンの都内の会社員女性(42)は、球場が眼下に望める日本青年館ホテル13階の一室で観戦した。テレビでは見られない守備の時の選手の動きや、ベンチからのかけ声が新鮮だった。「野球の魅力を改めて実感できた」

 東京・神田の野球居酒屋「リリーズ神田スタジアム」には試合開始の午後6時前から仕事を終えたファンが続々とやってきた。「密」を避けるために通常の半分に間引きした25席は予約で満席。四つの大型モニターで試合を見つめながら声援を送った。

 大学生だった昨季まで神宮球場でビールの売り子をしていた会社員の高野渚咲さん(23)は「歓声がないので、画面越しに選手の声が聞こえるのが不思議な感じ」。売り子時代の仲間とも連絡を取り合った。「売り子一本だった人は別のバイト先を探さないといけないし、ベテランさんは常連さんに会えないのが寂しいと言っていた。観客を入れることになってもあの形でビールを売れるのか心配です」と仲間を気にかけた。

 観戦仲間と訪れた西武ファンのエステティシャン、仁部久美子さん(40)は年間50~60試合を球場で観戦するほどの野球好き。今年は「正直、野球を忘れかけていた。やっと春が来ました」。ただ、この日も店の予約を済ませたものの、来店するかは最後まで迷っていた。「球場に観客を入れることになっても迷うと思う。不安はあります」と話した。