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 やっと行ける。やっと会える――。新型コロナウイルスの感染防止策として、首都圏の1都3県と北海道で自粛が求められていた県をまたぐ移動が全面解除された。一夜明けて初の週末を迎えた20日、動物園や水族館には県外から家族連れらが訪れ、久しぶりのにぎわいを見せた。空港やバスターミナルでは、心躍らせる旅行者の姿があった。

 東武動物公園(埼玉県宮代町)では、この日朝から約300人が列をなし、午前10時の開門を待った。

 「仕事もテレワークで県外に出るのは3カ月ぶり。もんもんとしていた」。川崎市のシステムエンジニア、松野下真秀さん(37)は、午前8時半から並んだ。

 園の年間パスポートを持ち、月4~5回は訪れてペンギンをはじめ1日2千枚ほどの写真を撮る大ファンだが、3月初旬に来たのが最後だった。園がネットで発信する動物の動画などを見ながら、移動自粛の全面解除を待ちわびていた。「きょうは久々なので、すべての動物を見て回りたい」と話していた。

 園が約2カ月ぶりに営業を再開したのは6月1日。1年で最も来園者が多い5月の大型連休中も休園を余儀なくされ、地元・宮代町は500万円の緊急支援を決定した。年間パスポートをもつ県外ファンも多く、園の担当者は「少し日常に近づける」と全面解除を喜ぶ。

 とはいえ、全面再開はまだ先だ。入場時の手指の消毒のほか、入園者全員にマスク着用を求め、人気がある動物との触れあい体験も人数や時間を制限しながらの限定開催。遊園地のゾーンでも約30あるアトラクションのうち稼働するのは10ほどにとどめる。担当者は「心配や不安を取り除くため、できることからしっかり取り組んでいきたい」と話す。

 約800種類の生き物を飼育展示する水族館「鴨川シーワールド」(千葉県鴨川市)でも開門と同時に、家族連れが次々に訪れた。

 「ずっと家にいて退屈だった。今日はシャチを見るのが楽しみ」。横浜市の小学6年、若林優歩(ゆうほ)さん(11)は笑顔を見せた。両親らと一緒に車で約2時間かけて来たという。

 水族館は計2カ月半休館し、6月1日に営業を再開。ただし、感染拡大を防ぐため、来館者は県内在住者に制限していた。

 19日から県外客の受け入れを開始し、それまで中止していた北極海周辺に生息するベルーガのショーや、生き物たちへの給餌(きゅうじ)タイムも復活させたという。

 それでも一部の施設は閉鎖が続き、中止したままのイベントもある。入館時には検温や手指の消毒、館内ではマスク着用を求め、1千人を収容するショーの観客席は半分に制限。屋内施設はドアを開けて換気するなど、感染症対策は続く。

 担当者は「我慢してもらう部分もあって心苦しいが、県外客もお迎えできるようになってひと安心。少しずつ元に戻れればうれしい」と期待する。

 水族館に併設し、計3カ月休業していたホテルも19日から営業再開。20日には栃木や東京などから予約があるという。(釆沢嘉高、小木雄太)

バスターミナルも空港も

 新宿駅南口のバスターミナル「バスタ新宿」。20日朝から、キャリーケースやリュックを提げた旅行者や家族連れでにぎわった。

 「5カ月ぶりに旅行に出かけます」。横浜市の男性(83)は県をまたいだ移動の自粛が解除されると知って、群馬・草津への旅行を決めた。「ずっと我慢していたので楽しみ。温泉でゆっくりしたい」と夫婦でバスに乗り込んだ。

 乗務員によると、群馬県の「伊香保温泉・草津温泉行き」には予約が殺到し、バスを3台に増やした。客席の1列目は販売せず、運転席に飛沫(ひまつ)防止のビニール製シートを設置したという。

 羽田空港にも都外へと旅立つ人たちの姿があった。

 東京の会社員、門田兼一さん(46)は、妻と0歳、3歳の子どもを連れて沖縄へ。「本当に移動制限が解除されるか心配だった。ホテルで家族とゆっくり過ごしたい」と胸を躍らせる。

 緊急事態宣言中の外出自粛で、仕事はリモートワーク(在宅勤務)に切り替わった。今回、10日間の沖縄滞在中も休暇をとらずパソコンで仕事を続ける。「東京にいても沖縄にいても仕事ができることに気づけたのはよかった。感染を広げないように気をつけながら過ごしたい」と話した。

 ただし、空港の客足は感染拡大前の状態とほど遠く、空港内のおみやげ店やレストランの中には休業を続けているところも。日本菓子店の男性店員(44)は「客足は少しずつ戻り、久しぶりに保安検査場に行列が出来ている。ただ、うちの客はまだ1日20人ほど。早く元の状態に戻ってほしい」と期待を込めた。(藤原伸雄、伊藤和行)