4カ月前、大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」での新型コロナウイルスの集団感染が、社会問題化していた。神奈川県の藤沢市民病院の阿南英明副院長は、船内の患者の搬送先の調整などに発生直後から力を尽くした。当時の状況、そして得られた教訓を聞いた。
ダイヤモンド・プリンセス号が横浜港に停泊したのが2月3日。感染症予防などを担う神奈川県健康危機管理課から私のところに電話が入ったのは4日の夜でした。
「大変だ」と。相当困っていることをうかがわせる、悲壮感漂う声でした。防衛医科大(埼玉県所沢市)で講演した後、滞在するホテルに戻った時にかかってきたのです。
新型コロナウイルスの感染者が乗っていたことがわかり、船が検疫の対象となりました。検査で判明した陽性者は10人。その患者を搬送しなければならない。県の担当者は電話で「DMAT(の出動)は無理ですよね」と言ってきました。とんでもないことが起きていると思い、「明日、県庁に行くよ」と伝えました。翌朝、一番で横浜港近くの県庁に入りました。
〈DMAT〉大地震などの大規模災害や、多数の負傷者が出た事故などが発生した際、急性期(おおむね48時間以内)から活動できる機動性を持った、専門的な訓練を受けた医療チーム。医師、看護師、業務調整員で構成され、都道府県などの要請を受けて活動する。名称は「Disaster Medical Assistance Team」(災害派遣医療チーム)の頭文字から。「ディーマット」と読む。
まず状況把握です。10人の患者がいたので、これを何とかしなくちゃいけない。幸い、横浜市消防局の救急車が10台用意できたので、あとは行き先を決めればいい。県内にある感染症指定医療機関の病院に次々に電話して、お願いしますね、と頼みました。
提案に応えた県の「英断」
問題はそのあとでした。災害…

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