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 理化学研究所と富士通が開発したスーパーコンピューター「富岳(ふがく)」が、22日に発表されたスパコンの計算速度ランキング「TOP500」で世界一になった。日本勢が首位を奪うのは「2位じゃだめなんでしょうか」と追及された先代の「京(けい)」以来9年ぶり。無理に速さを追うのではなく、使いやすい「オンリーワン」のスパコンを目指した先に「ナンバーワン」の花が咲いた。

 発表では、富岳の計算速度は1秒間に41・6京回(京は兆の1万倍)。昨年まで首位だった米国製スパコンを2倍以上引き離した。実際にソフトを動かした速さや人工知能(AI)向けの計算速度など4部門で首位を取った。理研は「社会的課題の解決やAIの開発を加速するのに、十分対応可能であることを実証した」としている。

 先代の京は世界一を強く意識したあまり使いにくくなり、利用は広がらなかった。主要企業が撤退するなど、開発の混乱もあった。富岳はこれを反省し、「使いやすいオンリーワン」のスパコンを目指した。名称も、利用の裾野が広がるよう富士山にちなんだ。開発費は国費だけで1100億円。中国が、富岳の倍の性能で今年デビューさせようとしていた新型が間に合わなかったこともあり、「ナンバーワン」の座も転がり込んだ。

 富岳の本格稼働は来年度の予定だが、すでに新型コロナウイルス感染症対策の研究で実績を上げ始めている。将来は創薬や高性能な材料の開発、気象・温暖化予測などに利用される。

 高性能な計算機があれば、自動車を組み立てる前に衝突安全性を確かめられるなど、ものづくりや科学技術の進歩を加速させる。軍事にも必須の技術で、米中などは開発にしのぎを削っている。米国は来年、富岳を超えるスパコンを投入する計画だ。

 開発リーダーの松岡聡・理研計算科学研究センター長は「覇権争いは続く。今後も使いやすさと速さを両立する研究を進めていきたい」と語った。(杉浦奈実、石倉徹也