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 新型コロナウイルス対策の原資として約600人の正規職員から国の特別定額給付金(1人10万円)と同額の寄付を集めることを想定した予算を組んだ兵庫県加西市が、非正規職員500人余りにも寄付を呼びかけていたことがわかった。市は寄付を「強制ではない」と強調するが、正規職員に比べて立場の弱い非正規職員にも対象を広げていることを疑問視する声が市内部から出ている。

 市が正規職員とあわせて寄付を呼びかけたのは「会計年度任用職員」と呼ばれる非正規職員。原則1年単位の契約で雇用される職員で、現在554人。

 事務補助のほか、保育士・幼稚園教諭、保健師、調理員、看護師ら職種は様々だ。市は5月18日、総務部長名の文書で正規・非正規の全職員あてに寄付を呼びかけ、6月の期末手当からの天引き依頼書も添えた。

 市の正規職員の一人は「非正規の職員同士で『私たちも寄付しないといけないのだろうか』と悩んでいる姿をみた」と話し、別の職員は「(非正規は)雇用が不安定なうえ、賃金格差もある。立場の弱い人たちへの寄付依頼は乱暴な印象を受ける」と疑問視する。

 非正規職員でつくる組合の一つは機関紙で「寄付というのは、個人の意志で『する・しない・金額・方法』などを決めるものです。誰かに言われてするものではありません」と呼びかけている。

 加西市の西村和平(かずひら)市長は23日、朝日新聞の取材に「私が市長として寄付を呼びかけた対象は正規職員までにとどめている。(非正規も対象に含めた)総務部長名の文書は、寄付への私の思いを市役所内に周知するためだった」と説明。「非正規職員からも自主的な寄付は受け取るが、正規・非正規問わず、職員に寄付を強制するような考えは全くない」と強調した。(広川始)

ぎりぎりの現場、寄付求める妥当性はあるのか

 「非正規公務員」の著書がある地方自治総合研究所の上林陽治研究員の話 新型コロナウイルス対応で、正規・非正規に関係なく公務員の長時間労働が常態化している。人減らしも進み、現場はぎりぎりの状況だ。公務員が率先して身を切り、寄付を差し出すべきだという発想は、今の現実に即していない。非正規職員が担う職種は保育士や看護師など市民の生活や健康を維持するために欠かせない。在宅勤務もできない最前線で、少ない給与で踏ん張る非正規職員にも寄付を求める施策が妥当なのか、加西市は再検討すべきだ。