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 上場企業の株主総会が本格化している。26日が今年の最大の集中日で、県内でも新型コロナウイルス感染拡大の影響が出ており、異例の総会となっている。

 通信機器や自動車用電装品を造るASTI(浜松市)は29日に総会を開き、取締役の選任議案などを審議する。一方で、この総会を閉じずに「継続会」として後日、決算の承認を受ける予定だ。

 継続会は、株主総会を2回に分けることで決算の承認を後日に回すことができる制度で、これまでも不祥事企業で使われることがあった。ASTIは、3月から始まったインド全土における封鎖措置(ロックダウン)の結果、連結子会社の決算業務に遅れが生じたため、継続会を選択したという。

 静岡市にも工場を置く巴川製紙所(東京都)も総会で承認されれば、継続会を開催する予定だ。新型コロナの影響で、国内外で監査業務に遅れが生じたためだ。「人事政策での混乱を避けるためなど総合的に判断した」としている。

 ただ、ここに来て継続会にもいくつかの課題が浮かび上がっている。監査報告など決算の手続きが完了しない状態で役員を選ぶことになり、「監査が終わらない中、取締役選任や配当などの議案には到底賛成できない」(投資家の男性)との声も出ている。

 機関投資家に議決権行使を助言する米国系のISSは、継続会を開く企業への対応を今年5月に公表。継続会の場合、賛否の判断に必要な情報が足りないとして、配当などの一部の議案に「棄権票」を投じるよう推奨している。棄権票は事実上、反対票になるため会社にとっては痛手だ。

 金融庁、経団連などでつくる官民の協議会は今年の6月総会について、継続会か、総会そのものを延期させることを選択肢として示した。結果的にこの対応をとった企業は少ない。

 東京証券取引所によると、3月期決算の上場企業のうち、継続会は少なくとも24社。これに加え、総会を7月以降に遅らせるなどした上場企業は80社以上になると見られる。約2300社のうち3~4%の見通しで、日本公認会計士協会の手塚正彦会長も18日の記者会見で「もう少し出てくると予想していた。今後の状況を見ていき、何か不都合が生じればやるべきことをやる」と語った。

 監査業界からは「多くの監査法人がテレワークで対応しており、十分な監査ができたのか疑問も残る。継続会などを選択した会社や監査法人は誠実に対応したのではないか」との声も出ている。今回の決算や監査実務が適正に行われたのか、検証が必要のようだ。

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 今年6月の株主総会は多くの企業で例年と大きく異なる対応をとっている。株主に来場を控えるよう呼びかけ、参加者への土産や総会後の懇談会を取りやめた社もある。

 23日に浜松市中区の本社で開催されたヤマハの総会に出席した株主は、昨年の266人から約7割減の40人(定員約70)だった。会場は、感染防止のため、座席の間隔を広くし、例年行っていたミニコンサートや施設の内覧も取りやめた。

 社員は会場入り口で株主に対して検温と消毒を徹底し、マスク着用を呼びかけた。今年の招集通知には、事前にインターネットで議案の賛否について投票を求め、「可能な限り来場を見合わせてほしい」と明記した。

 静岡市清水区のはごろもフーズも26日に同区内の日本平ホテルで予定する総会への来場を見合わせるよう株主に呼びかけた。例年開催していた総会後の懇談会もとりやめ、お土産も中止した。

 この十数年、総会は株主との意見交換の場として積極的に活用されてきた。今回の対応で株主と対話が減ることが予想され、新たなコミュニケーションの取り方が求められそうだ。(和田翔太、加藤裕則)