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元東大総長が語るコロナ対策のミス カギ握る知の構造化

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服部尚
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 新型コロナ緊急事態宣言は解除され、ふだんの生活に戻りつつあるが、第2波への懸念は消えないままだ。別の未知のウイルスに襲われることもあり得る。日本のコロナ被害は欧米と比べても少なかったという見方もあるが、偶然が重なったに過ぎないかもしれない。元東大総長小宮山宏さん(三菱総合研究所理事長)は今回の感染拡大で得られた知識や経験を生かす「知の構造化」が必要だという。

行動自粛はコロナに有効だったのか

 ――新型コロナといつまで向き合っていかなければならないのでしょうか。

 「いつどのようになったらコロナ以前の社会に戻れるのか」。この問いへの答えを見いだすためには、おびただしい量の新型コロナウイルスに関する情報から、重要なものを選び出して配置する「知の構造化」を進めなければなりません。

 ――「知の構造化」とは聞き慣れない言葉です。どんなイメージでしょうか。

 コロナで起こった現象は、さまざまな領域にわたり、とても複雑です。こうした現象のなかから、最小限の要素を選び出して、目的を表現するための知的枠組み、つまりモデルを考える。これが知の構造化です。そのモデルを多くの人が理解することによって社会が変わっていくことを期待しています。コロナの場合で言えば、たとえば、感染の抑制と社会の継続をできるだけ両立させるという目的に対して、行動自粛のような隔離策が有効だったのか、次に備えて違う施策はあり得るかなどを表現するモデルを作るということです。

 ――なるほど、次につなげる教訓を得るための考え方なのですね。

 知の構造化を進める材料として、三菱総研は、「アジア」「欧米・南米」「オセアニア・中東」の三つの地域の新型コロナによる感染者数や死亡者数、検査数などの情勢を分析しました。すると、多くのことがわかってきました。

欧州とアジアの状況

 ――なんでしょう。

 その一つが、世界の中での日本の致死率、つまり感染した人のうち死亡する人の割合の状況です。新型コロナの世界での感染状況の数値をリアルタイムで伝える国際的な統計サイト「ワールドメーター」の集計をもとに分析しました。その結果、今年6月1日時点で、日本の致死率は5・2%と、同じアジアにある台湾の1・6%、タイ1・9%、韓国2・4%に比べると高いことがわかりました。新型コロナ感染拡大が最初に問題になった中国の5・6%と同じくらいです。日本の致死率がアジアのなかで決して低いというわけではありませんでした。

 ――欧州をみると日本より大幅に高い国が目立ちます。

 たとえば、ベルギー16%…

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服部尚
服部尚(はっとり・ひさし)朝日新聞記者
福井支局をふり出しに、東京や大阪の科学医療部で長く勤務。原発、エネルギー、環境、医療、医学分野を担当。東日本大震災時は科学医療部デスク。編集委員を経て現職。