[PR]

 岐阜市で3月、路上生活をしていた渡辺哲哉さん(当時81)が襲撃され死亡した事件をめぐり、インターネット上では、デマ情報や誹謗(ひぼう)中傷の投稿が相次いだ。事件とは無関係な人に被害が広がっている。

 4月23日、岐阜県内に住む19歳の少年3人が殺人容疑で、同じく19歳の少年2人が傷害致死容疑でそれぞれ逮捕された。

 少年法では、19歳は少年で、少年時の犯罪は記事などの実名掲載を禁じている。しかし、ネットでは「大学名も実名も出すべきだ」など、少年たちを特定する動きが高まった。

 逮捕直後、傷害致死容疑で逮捕された2人が朝日大学(岐阜県瑞穂市)の硬式野球部に所属していると一部で報道があり、大学も認めた。朝日新聞も大学の公表後に報じた。

 「特定できそうですね。知ってる人はぜひともリークして下さい」「犯行の動機と住所も特定か」。硬式野球部では、無関係の学生がネットで容疑者扱いされ、実名や顔写真をさらされた。「野球」というキーワードで、大学以外でも無関係の男性が複数、実名を書き込まれた。

 このうち1人については、過去に所属していた少年野球チームがインスタグラムで声明を公表。「彼は事件に一切関与していない。デマ情報については、訴訟を視野に警察署に相談している」と投稿した。チームの関係者は「彼や彼の家族にも危害が及ぶのはおかしい。守りたいと思い、投稿した」と訴えている。

 傷害致死容疑で逮捕された2人は、「暴行を共謀した事実が認められない」として不起訴処分となった。しかし、大学には約1カ月間で「学生の実名を出せ」などの約750件の問い合わせや抗議の電話、メールが殺到した。

 学生の就職活動にも影響が及んでいる。大学の関係者によると、逮捕の報道があった数日後、硬式野球部4年生の3人は内々定が保留となった。企業側は理由を明らかにしていない。看護学科の女子学生らは、企業の面接で「事件についての意見」を求められた。別の企業から「事件とは無関係か」と電話で念を押された学生もいる。

 大学には企業側から「この学生は本当に大丈夫か」との問い合わせもある。担当者は、学生には何かあれば相談するよう伝える一方、学生が不利益を被らないよう、企業を回って事情を説明しているという。

 事件後、大学は硬式野球部を無期限活動停止処分とし、監督も引責辞任した。さらに有識者を交えた学内調査委員会を設置。渡辺さんが事件前にも投石被害を受けていたことについても調査し、「過去の投石行為にも、ほかの学生の関わりはない」と結論づけた。

 事件をめぐっては、岐阜地検が、殺人容疑で逮捕された元少年(20)と、家裁送致後に検察官送致(逆送)された少年(19)の2人を傷害致死罪で起訴した。別の少年(19)は、岐阜家裁が傷害致死の非行内容で少年院送致とした。(松山紫乃)