大仏に学ぶコロナ禍の暮らし 芥川賞作家・玄侑宗久さん
新型コロナウイルスとどう向き合うか。「コロナ禍」後の社会とはどんなものなのか。芥川賞作家で僧侶の玄侑宗久さん(64)に聞いた。
淡いお別れ
「5月中旬にあったお葬式は、僧侶以外全員マスク着用で会食なしでした。参列者が焼香し、マスク越しに遺族らと会話する。非常に淡いお別れでしたね。最近気になったのは、『(葬儀をせずに)火葬だけでどうか』と言った和尚がいる、と聞かされたこと。感染を恐れたのだとしても、宗教者からそういう発言が出るというのはショックでした」
しかし、初期の感染拡大防止策が厳しくなることには一定の理解を示す。
「感染症の防ぎ方がいったん過剰になるのは仕方ない。最初は『それじゃ離れすぎだろう』というくらい距離をとってもいいと思う。でもそれを一時的な我慢だと思っていると元に戻ってしまう。それでは、新しい距離の取り方がテーマ化しない。結核の場合を見ても、日本は先進国の中で罹患(りかん)率が高い(注)。緩みやすいところがあるのではないでしょうか」
注=2017年の人口10万人あたりの届け出率は13・3で、10以下の欧米より高い(公益財団法人結核予防会のホームページから)。
コロナ禍は世界的な人や物の往来を弱め、産業などにも大きな影を落とした。
「行き過ぎたグローバリズム、外国人労働者に頼る経済、低下する一方の食料自給率とか、問題が噴き出している。大きな変化のチャンスですが、一番やっかいなのは覇権思想でしょう。国境を飛び越えるウイルスにとって、国同士が争う『自国ファースト』は最高のチャンスです。自国のためにマスクを囲い合うという騒ぎまであった。この機に覇権争いが解体すればいいなと思います」
ウイルスにとって最も困った状況とは
ウイルスに対するあり方を考えるうえで注目するのは、奈良時代だという。
「共同で緩い紐帯(ちゅうた…
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