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妻のおいしい、聞けなくても満足 「男性介護」の10年

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編集委員・清川卓史
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 50年連れ添った70代の夫婦。そのうち10年間は、アルツハイマー認知症と診断された妻に夫が寄り添う、介護の日々だ。夫が欠かさぬ日課がある。妻の姿と、その日作った夕食の撮影だ。25冊まで増えたミニアルバムのタイトルは「おとんとおかんの毎日」という。

「いまは食べて、うんちしてくれたら、もう満足」

 「はい、たっこちゃん、食べて」

 午後5時過ぎ、神奈川県伊勢原市の吉川義博さんが、妻たづ子さんに笑顔で声をかける。この晩の主菜は八宝菜。ホウレン草のごまあえ、ポテトサラダなどのおかずに、一口サイズのミニおにぎりが六つ。妻が食べきれなかった残りを吉川さんが食べる。

 妻が病気になる前は、休日にチャーハンを作るくらいだった。介護を始めて料理教室に通ったり、新鮮な食材を使おうと市民農園で野菜作りを始めたりした。

 最後に「おいしかった」と言うたづ子さんの声を聞いたのは4年前になる。認知症の症状が進み、少しずつ言葉のやりとりは難しくなった。「いまは食べて、ちゃんとうんちしてくれたら、もう満足なんだ」と吉川さんは言う。

 食事の介助をしながら、ふと…

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