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 津市の「反差別・人権研究所みえ」は、三重県内の市町に、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う差別やデマに対する取り組みを聞くアンケートを実施し、結果をまとめた。感染者らへの差別事例について、情報の集約をしている市町は3割に満たず、同研究所では「県内市町の取り組みはまだ弱い」と分析している。

 アンケートは県内の29市町を対象に今月上旬に実施し、28市町から回答を得た。同研究所によると、県内では、中国にルーツのある生徒を「コロナ」と呼んだり、感染者が出た会社の従業員が嫌がらせを受けたりする事例が起きており、各市町の対応を調べた。

 それによると、9割以上の市町が、新型コロナウイルスの相談窓口を設置しているものの、感染者や家族、医療関係者らへの差別やデマについて情報の集約に努めているのは、8市町にとどまった。

 ネット上の差別投稿のチェックや削除要請を実施しているのは、わずかに6市町。コロナ差別を解消するための啓発や教育活動では、既存の広報誌やホームページを活用する市町こそ5~8割に達したが、冊子や教材の開発などは2割に届かず、低調だった。

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 アンケート結果について、反差別・人権研究所みえの松村元樹事務局長に聞いた。

 今回の調査で感じたのは、コロナ禍から生じた差別やデマなどに対する自治体の動きの鈍さです。

 研究所では、感染者や家族から直接の相談も受けてきました。なかには「居酒屋やパチンコ屋に入り浸って感染した」など、事実に基づかない誹謗(ひぼう)中傷が拡散した事例もありました。ですが、多くの自治体が、差別やデマの情報集約も、ネットのモニタリングも実施していません。危機感が希薄で、当事者意識に欠けている自治体が少なくありません。

 コロナ差別が拡散する現状を深刻に受け止めています。一方で、差別問題にこれほどの関心が集まっている今は、部落差別や在日コリアンへのヘイトスピーチなど既存の差別問題も含め、解消への道筋を探れる時期だと思います。

 より大きな攻撃にさらされることを恐れ、感染者やその家族が誹謗中傷にあらがいの声を上げられない構造は、外国人などマイノリティーへの攻撃とも同じです。「自粛警察」なども含め、コロナ差別で攻撃する側にこそ問題があることを明らかにすることは、既存の差別の構造をも市民に認識させるでしょう。

 また、コロナ差別が既存の差別を増幅させている面もあります。実際、ネットには「感染者が出たのはあの部落だ」とか、「コロナ感染の中国人、日本から出ていけ」などの悪質な書き込みもありました。コロナ差別と既存の差別は密接に結びついています。

 自治体が適切に対処できれば、今回の事態は、既存の差別問題の解消にもつながる大きなチャンスになると思います。(黄澈)