[PR]

 僕らのおなかと心を満たしてくれた食堂を守りたい。大阪府立河南高校(富田林市)の卒業生が校内食堂を支援するクラウドファンディング(CF)への協力を呼びかけている。新型コロナウイルスの影響で苦しむ「おっちゃん」の背中を押そうと立ち上がった。

 「食堂とおっちゃんは大丈夫だろうか」。新型コロナの影響が広がった4月、大阪市内で看護師として働く牧裕輝さん(25)は、飲食店の苦境を伝えるニュースを見て心配になった。

 河南高は全日制普通科の共学で生徒約1千人。校内の食堂はおっちゃんこと中村純也さん(41)の個人経営だ。学校は2月末から休みが続いていた。牧さんは中村さんと連絡をとり、4月末に会いに出かけた。

 校内の食堂を利用するのは生徒と教職員だけで、休校中は休業せざるを得ず、収入はゼロに。一方、自動販売機の電気代や冷蔵庫のリース代などで月十数万円の支出は続いていた。

 中村さんが食堂を引き継いだのは、牧さんが高校3年だった8年前だ。「生徒たちにおいしいご飯を安く食べてもらいたい」と利益は最低限に抑えてきた。先行きも見えず、「もう営業は無理かもしれない」と中村さんはため息をついた。

 実情を知った牧さんはCFをしたいと申し出た。中村さんは当初、「みんなの思いを背負えるだろうか」と消極的だったが、牧さんは「思い出の食堂をなくしたくない」と説得を重ねた。「もう一度頑張ろう」と中村さんは決意した。

 高校の頃、牧さんは毎日のように食堂へ行った。所属していたサッカー部の練習を終えた後は、大好きな唐揚げを食べながら、仲間と練習メニューを話し合ったり、好きな女の子の話で盛り上がったり。限定メニューでフレンチトーストが出る日は、1限後の休み時間から「争奪戦」だった。

 看護師になったのも食堂がきっかけだ。進路に悩んでいた2年の頃、部活終了時に中村さんの前任のおっちゃんに「手に職をつけたい」と相談した。いろんな卒業生から職場の現状を聞いていたおっちゃんは「看護師はどうか」と勧めた。牧さんは看護の専門学校に進んだ。

 牧さんは親友でサッカー部の部長だった岩根昴太(こうた)さん(26)と協力し、6月からCFを始めた。インスタグラムでも食堂の写真や動画を投稿し、寄付を呼びかけた。卒業生からは「卒業して30年が経つが、あの食堂は忘れられへん」「部活が終わるまで開けてくれてありがとう」といった声が相次ぎ寄せられた。「愛されてきた食堂なんだな」と牧さんは改めて実感した。

 目標を500万円に設定したCFは7月5日までだが、寄付は6月28日夕現在で310人の183万円にとどまっている。牧さんは「新型コロナの第2波に備えるためにも協力してほしい。在校生はおっちゃんに『いつもありがとう』と一声かけるだけでも励みになる」と呼びかける。

 支援はCFサイト「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」(https://camp-fire.jp/projects/view/288396?list=watched別ウインドウで開きます)から。新メニューを考える権利や、食堂に貼れるメッセージカードといった寄付額に応じたリターン(お礼)ももらえる。(山本逸生)