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 フランスの統一地方選挙に向けた取材の準備をしていたときのこと、人口1人の自治体があることに気がついた。今年3月のことだ。

 フランスの地方では確かに、石造りの家屋がほんの十数軒しかない美しい村に出会うことがある。

 それにしても、村に1人とは、いったいどんな奥地なのか。誰がいつから住んでいるのだろう。そして、その村でも選挙が行われるのだという。自分で自分の名前を書けば投票率も得票率も100%ということか。

 謎めいた仏南東部の村ロシュフルシャを訪ねた。 

拡大する写真・図版仏南東部ロシュフルシャの集落へいたる道=3月14日、疋田多揚撮影

 パリから高速鉄道TGVに乗って南へ2時間。バランス駅から車に乗って、東の山岳地帯へ走らせる。じきに携帯の電波が途切れ、道路以外の人工物が何もない、小川と里山だけが続く道になった。

 これだけの奥地だと、景色の中に人類未踏の丘陵もあるのかもしれない。などと考えているうちに、ロシュフルシャに到着した。山裾をなでる風の音だけが聞こえる静かな集落だった。

拡大する写真・図版仏南東部ロシュフルシャの村長、ジャンバプティスト・ドマルティニさん=3月14日、疋田多揚撮影

 迎えてくれたのは村長のジャンバプティスト・ドマルティニさん(43)。年季の入った石造りの家だと思ったら、「17世紀に建てられたらしいんだ」という。「昼食を一緒に」と誘ってくれていたので、お礼に白ワインを手渡した。自宅前の庭で白身魚のソテーにポテトサラダを振る舞いながら、来し方を語ってくれた。

 ドマルティニさん、ふだんはパリで弁護士をしている。この家は別荘で、2006年に購入した。以来毎月1度ほど、週末を静寂な山の中で過ごす。

 ドマルティニさんが村長になったのは08年。それまで25年以上務めた前任者が高齢を理由に引退し、職務を引き継いだ。

 村の予算は年間2万5千ユーロ(約300万円)。多くは全長7キロの村道の補修にあてられる。

 「役場」は村道をはさんで、ドマルティニさんの自宅の向かいにある。教会とつながった2階建てで、かつては司祭が暮らしていた館だという。ここの居間が、村議が予算の使い道を話し合う議場であり、翌日の選挙の投票所でもある。人口が1人で村議もいるというのはどういうわけか。謎は深まる。

拡大する写真・図版仏南東部ロシュフルシャの「村役場」。村民がくつろぐ憩いの場であり、村議同士で議論する「議場」であり、選挙時には「投票所」になる=3月14日、疋田多揚撮影

 議場である館にはキッチンやベッドなどが備え付けてあり、たまに訪れる旅行者向けの民泊も兼ねている。宿泊費は村の収入になるという。

 さて、どうしてパリに住んでい…

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