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 地鳴りのような歓声を背に、大関照ノ富士は険しい表情で西の花道を引き揚げた。テレビのリプレーを見つめ、風呂のドアをたたく。「ドン」。支度部屋に鈍い音が響いた。報道陣に囲まれると、気持ちをはき出した。「目に見えないつらさもあるんだよ。お客さんは目に見えることしかわからないから……」

 2017年3月26日、春場所千秋楽。新横綱稀勢の里の劇的な優勝の裏で、照ノ富士は含みのある言葉で孤独を表現した。その意味を読み解くには、2日前にさかのぼる必要がある。

 13日目の結び。全勝だった稀勢の里が日馬富士に敗れ、左胸付近を痛めた。うめき声を上げるほどの明らかな大けがだった。ただ、その直前に1敗で追う照ノ富士にもアクシデントが起きていた。鶴竜を破った取組で左ひざの古傷を悪化させたのだ。

 翌日、人知れず病院で治療を受けてから土俵へ。注文相撲で琴奨菊に勝ったものの、相手の大関復帰を阻んだことで、観客からはブーイングとヤジが飛び交った。敗れた稀勢の里から首位を奪った大関はすっかり「ヒール(悪役)」となった。

 そうして迎えた千秋楽の直接対決。大声援が横綱に送られる中、照ノ富士は稀勢の里の突き落としにひざから崩れた。会場の空気はさらに横綱へ傾く。優勝決定戦。両差しになりながら逆転の小手投げに屈した。「目に見えないつらさ」を嘆いたのはその後だった。

 照ノ富士にとって、これが悪夢の始まりだった。

 悩まされてきた両ひざの痛みは…

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