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経世彩民 江渕崇の目

 米同時多発テロへの「仕返し」とばかりに米軍が最貧国アフガニスタンに爆弾の雨を降らせた約18年前、作家の辺見庸さんが朝日新聞に寄せた論考の一節を鮮明に覚えている。

 「報復攻撃の裏には、冷徹な国家の論理だけではない、だれもが公言をはばかる人種差別がある、と私は思う。それにあえて触れない報道や言説に、いったいどれほどの有効性があるのか――私は怪しむ」

 2度の墜落事故で計346人の命を奪ったボーイングの最新鋭機「737MAX」をめぐる問題を、私は1年あまり追いかけてきた。米メディアがあまり触れようとしないが、確かに存在するアメリカの暗部を取材で感じないわけにはいかなかった。

拡大する写真・図版事故後に運航・納入が止まり、地方空港に留め置かれたボーイング737MAX=2019年12月、米ワシントン州モーゼスレイク、江渕崇撮影

 アジアやアフリカの人々の命の軽視。辺見さんが指摘した、人種差別である。

それでも飛び続けたMAX

 どういうことか――。最初の事故はインドネシアで起きた。18年10月29日、ジャカルタの空港を飛び立ったばかりのライオン航空610便が海に墜落。機首の傾きを測るセンサーの不具合で飛行制御システムが誤作動し、機体がコントロール不能になった。

 ボーイングも、安全性にお墨付きを与えた米連邦航空局(FAA)も、米国製の機体の欠陥を認めなかった。犠牲者189人の大半はインドネシア人。米国で大きな問題になることもなく、MAXは世界を飛び続けた。

拡大する写真・図版737MAXを組み立てるボーイングの工場=2019年3月、米ワシントン州レントン、江渕崇撮影

事故の恐れと誤作動の記録

 だがその裏でFAAは「何もしなければMAXは2、3年ごとに墜落事故を起こし、最大で15機の計2900人が亡くなる恐れがある」との分析をまとめていた。ボーイング社内でも、ある記録が見つかった。事故前の16年、テストパイロット責任者がMAXのシミュレーター試験中、問題の制御システムが誤作動。「暴れ回っている」「これはひどい」などと同僚に伝えていたのだ。

 そして最初の事故から半年もた…

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