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 やっと今日も洗濯が終わった。この梅雨の時期の貴重な晴れ間を狙って、やっとの思いで洗濯し、洗濯機のドアを開けた次の瞬間、「なにこれ!! ティッシュ入れっぱなしにしたの誰!!」

 こんな悲劇を体験したことはありませんか?

 あります。あります! リョウさんもそのひとりです。この4月から1年生になった娘が、ハンカチやティッシュをポケットに入れたまま洋服を洗濯機に放り込むのです。

 リョウさんはADHDの主婦です。数年前に結婚した夫と娘がいます。リョウさんには、うっかりミス、ぎりぎりバタバタが日常的にあるため、日々の雑用にあたふたしています。

 今回の娘さんのようなミスは、きっと多くの人が一度は経験済みでしょう。子どもが気をつけて次からちゃんとハンカチとティッシュを取り出してくれれば、一度で終わるのです。もしくは、洗濯物を直接洗濯機に入れるのではなく、いったんカゴの中に脱がせて、チェックしてから洗濯をスタートというのも現実的かもしれません。しかし、リョウさんは「うっかり」その手順を忘れてしまいますし、なにしろ「めんどうくさい」ことは続かないのです。もっと教育的にいえば、娘さんが一生ポケットからティッシュとハンカチを出さないままで洗濯をするのは、避けたいところです。当たり前ですよね。つまり、親がいつまでもチェックするのは何か違う、子どもに生活に必要なスキルを教え損なうということです。

ティッシュ事件の対応策は

 ではどうすればいいのでしょう。子どもに必要なスキルを教えつつも、それでも親子でうっかりしているので、ティッシュまみれ事件を避けたいのです。

 まずは、避けていただきたい対応からです。

 ×子どもを叱る。「なんでティッシュ出さなかったの!!」

 →気持ちはわかるが、覆水盆に返らず。意味のない問い。

 ×洗濯物チェックをする。

 →前述したとおり、教育上進歩がないし、リョウさんも忘れる。

 ではしていただきたい対応です。ここは頭を柔軟にして考えましょう。

 ○子どもと脱衣所で洗濯物を洗濯機に入れる動線を確認する。

 →動線が明らかになれば、どの場所で「ティッシュを出して」リマインダーが必要なのかを明らかにすることができます。

 ○子どもに、リマインダーの方法を考えさせて、その場で対策させる。

 →付箋(ふせん)に「ティッシュ出して」と書かせて洗濯機のドアに貼る。

 ○お風呂に入る時間が一定ならば、時間リマインダーも有効。

 →毎日アラームを19時にセットなど。

 ○帰宅していつもすること(ルーチン)に抱き合わせでハンカチ、ティッシュを出す。

 →帰宅して学校からもらったプリントや給食セットを出すのと同時にハンカチ、ティッシュも出す。

 いかがでしょう。

親子で探偵になって解決を

 実行の秘訣(ひけつ)は、子どもをティッシュ事件の容疑者にするのではなく、自分と共に解決に導く探偵になってもらう協働の立場に置くことです。

 子育てでこの姿勢を取り入れておくと、他の問題についても隠したり、萎縮したりせず、一緒に工夫を楽しめるようになります。親としても、ガミガミ言わずに改善できるので、ストレスフリーです。

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 もちろん、それでもミスは生じます。こういう対策も保険としてありでしょう。

 ・洗濯しても溶けてしまわないティッシュを使う

 ・ティッシュをポケットではなく学校の机の引き出しに入れる(ごめんなさい)

 今回ご紹介したような、ハンカチやティッシュを入れたまま洗濯に出してしまうことがあるからといって、ADHDなのではありません。脳の発達の途中にあり、まだうまく「~することを覚えていなくちゃ」と記憶して、確実に実行するという能力(実行機能と呼ばれる脳の高度なはたらき)が十分に身についていない、小学校低学年の子どもにはよく見られる例ですので、ご心配なく。生活習慣をスムーズにつけてあげるために、コラムの内容を活用していただければと思います。

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中島美鈴

中島美鈴(なかしま・みすず) 臨床心理士

1978年生まれ、福岡在住の臨床心理士。専門は認知行動療法。肥前精神医療センター、東京大学大学院総合文化研究科、福岡大学人文学部、福岡県職員相談室などを経て、現在は九州大学大学院人間環境学府にて成人ADHDの集団認知行動療法の研究に携わる。他に、福岡保護観察所、福岡少年院などで薬物依存や性犯罪者の集団認知行動療法のスーパーヴァイザーを務める。