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 コロナ禍で舞台公演の中止が長引く中、少しでも演劇の風を届けようと、静岡県舞台芸術センター(SPAC)が「でんわde名作劇場」に取り組んでいる。俳優らが依頼者の自宅に電話をかけ、文学作品や戯曲を朗読する試み。「舞台を思い浮かべながら、聴き入った」と好評だ。

 「白い浜辺の松原に~」 俳優の宮城嶋遥加さん(26)は電話口でいきなり歌い出した。朗読作品は出身地の静岡・三保半島の伝説「三保の松原 羽衣」。羽衣を拾った漁師の白龍と、「返してほしい」と頼む天女のやりとりを、声色を変えて読んだ。さながらラジオドラマのようだ。

 依頼者は大阪府高槻市の安田信夫さん(72)。5年来の演劇ファンで、例年200本以上を見るという。朗読後に「声が少し割れたのが残念やけど、天女が舞っている姿が頭に浮かんだわ」と感想を述べた。「演劇の禁断症状が和らいだ。ちょっとだけやけどな」

 朗読は、コロナの影響で中止になった「ふじのくに⇄せかい演劇祭2020」の代わりに、SPACが取り組んだオンライン演劇祭のプログラムの一つ。4月~5月の20日間に9人の俳優が130件を超える依頼に応えた。依頼者からは「生き返った気がする」などの声があり、俳優を20人に増やし、6月6日から再開した。

 SPACの芸術総監督の宮城聰さんは本物の舞台とオンラインの演劇を「カニとカニカマ」に例えた。宮城嶋さんも、俳優の身体性によって立つ演劇と配信や朗読は違うと感じる。「でも、おいしいカニから作られたカニカマは、おいしいはずです」。2月下旬以降、舞台には立っていない。「お客さんに届ける本番は久しぶりだったので、とても楽しかった。この期間においしいカニになれるように稽古を続けます」

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 8月31日まで(7月8日を除く)。毎日午前11時、午後1時、3時、5時の4枠があり、各回30分。無料。俳優を指定して、俳優が選んだ作品を聴くオプションは700円。希望日時の2日前までに、SPACチケットセンター(054・202・3399)で予約が必要。(阿久沢悦子)