第1回中島岳志氏「政府、地元を軽く見ていた」 イージス問題
聞き手・曽田幹東 神野勇人
イージス・アショア配備問題とは何だったのか。国が計画を断念したのはなぜなのか。「住民無視の計画だった」と語る政治学者の中島岳志さん(45)は、日米の政局の事情に加え、計画進行を押し戻した地元の動きが実を結んだという見方を示す。
なかじま・たけし 1975年、大阪府生まれ。東京工業大リベラルアーツ研究教育院教授。専攻は近代日本政治思想史、南アジア地域研究。2005年に「中村屋のボース」で大佛次郎論壇賞受賞。著書に「ナショナリズムと宗教」「『リベラル保守』宣言」など。
――ミサイル発射時に切り離される推進装置「ブースター」の危険性を理由に、政府は計画を断念しました。
「ブースターのコントロールが難しいということは、みんな知っていた。米国との共同開発の中で、非公開ながらコントロールできるという見通しがあって配備しようとしているのかと思っていたが、実際は安全にコントロールするには10年かかることがわかった。『ブースターが落ちて被害が出ても仕方ない』という態勢で配備計画を始めたことが明らかになった。ブースターの問題は山口に特に関係するが、秋田の新屋演習場でも市街地に非常に近いという別の危険要素があった。まったく住民無視だったことは明らかだ」
――断念がこのタイミングだったのは、なぜでしょうか。