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(18日、滋賀独自大会 彦根翔西館9-3日野)

 夏季滋賀県高校野球大会(県高校野球連盟主催)は、無観客試合で開かれている。静かな球場には、グラウンドやベンチからの選手の声がよく響く。7月18日の皇子山球場第3試合では最終盤、劣勢でも粘り強く戦う日野の選手たちの声が、スタンドの記者にも聞こえてきた。

     ◇

 6点差をつけられた九回表。遊撃の守備位置についたばかりの日野の江原大道(ひろみち)主将(3年)が、一塁側ベンチの谷口顕(けん)監督から呼び戻された。

 「マジか!」

 応援席にも聞こえる声に、保護者らからも笑いが起きた。

 正捕手の藤井優也君(3年)が前の打席で手首に死球を受け、握力が弱まるという緊急事態。公式戦初マスクをかぶることになり、思わず本音が漏れたのだ。

 急いで防具を着け、この回から再登板するエースの鳥本英希(ひでき)投手(3年)がいるマウンドへ。

 「サインには遠慮なく首を振って。頼りないけど、頼ってくれ」

 笑顔で言い残し、本塁で腰を下ろすと声を張り上げた。

 「締まっていこう!」

 気合が入って少し裏返った。でも、その気迫に相手の三塁側スタンドの保護者からも拍手が送られた。

 1点を失い、なおも2死一、二塁。追い込んでからの決め球は、すんなりとサインが合った。

 パチン!

 糸を引くような内角への直球。心地良い音が球場に響き、ミットに収まった。マスクを外してベンチに引きあげるときも、やはり笑顔だった。

 日野は昨夏、33年ぶりに8強に進出した。下級生の選手が多く残り、期待も大きかった。だが、新チーム結成後の練習試合ではなかなか勝てなかった。

 重圧は顔には出さなかった。グラウンドの周りの田んぼの農家のおじさんや、部員が通う地元の食堂のおばさんらの「頑張ってね」の声も励みになった。

 江原主将は地元出身。野球部の活躍で町を元気にしたい。そんな思いも胸に、独自大会に臨んでいた。

 九回裏の攻撃。先頭で打順が回ったが、代打が出て退いた。それでも仲間とベンチから声を張った。

 「つないでくれ!」

 呼応するように、3安打を集め1点を返した。泣いた顔を見たことがない同級生が涙を浮かべる様子に、自分の視界もにじんだ。

 反撃はそこまで。スコアは3―9。だが、練習試合ではあっさり負けていたチームの最後の一体となった攻撃に「いいチームになった」と感じた。

 今後は推薦での大学進学を目指す。教員免許を取り、高校野球の指導者になるのが夢だ。

 「野球を通していろんな人とつながり、支えられた。人間関係を大切にできる指導者になりたい」(安藤仙一朗)