広島への原爆投下後に降った「黒い雨」による健康被害を認め、原告84人全員に被爆者健康手帳を交付するよう広島市と広島県に命じた29日の広島地裁判決を受け、松井一実市長は31日、訴訟に参加する国に対し、控訴を断念する政治判断を求めたことを明らかにした。
市と県は、国に黒い雨の援護区域拡大を求めてきたが、手帳の交付業務を国から受託する立場のため、原告と争わざるを得なかった。市によると、市と県の幹部が30日に厚生労働省を訪問。「判決を重く受け止め、科学的知見を超えた政治判断を優先し、県と市が控訴しないことを認めてほしい」と求めたという。松井市長は31日の会見で、8月6日の平和宣言でも、黒い雨降雨地域の拡大に向けた政治判断を強く求める考えを示した。
湯崎英彦知事も「国と協議しながら決める必要があるが、引き続き被爆者援護の立場に立って対応する」との談話を出した。
また、公明党の斉藤鉄夫幹事長は31日の定例会見で「黒い雨を浴びたということは、非常に強い放射線被曝(ひばく)があったと科学的に言うこともできる。私は率直に、国は認めるべきだと思っている」と語った。
厚労省健康局総務課の担当者は取材に対し、「コメントは差し控えるが、今後も市と県と協議していきたい」と話した。