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 新型コロナウイルスの大規模な院内感染が起きた永寿総合病院(東京都台東区)の湯浅祐二院長が1日、千代田区の日本記者クラブで記者会見した。感染発覚から3カ月余り。公の場で初めて、入院患者43人が死亡したことについて「他の病院に比べて新型コロナへの対処が甘い状況があった」と述べ、謝罪した。

 同病院では、3月23日に同じ病棟の入院患者2人の感染が発覚。これまでに入院患者やその家族ら131人と、看護師ら職員83人の計214人が感染した。診療科別では、白血病などの治療をする血液内科で48人が感染。うち23人が死亡するなど、多くの患者が感染により命を落とした。

 湯浅院長は「最も大きな被害を受けて苦しまれたのは患者さんとその家族。病院の責任者として深くおわび申し上げる」と謝罪した。会見の開催がこの時期になったことについては「途中では申し上げるべきことが整理できなかった。職員が懸命に対応している中で、不十分な形での会見はできなかった」と釈明した。

 湯浅院長の説明によると、集団感染の起点となった患者の1人は、2月26日に脳梗塞(のうこうそく)の診断で入院。3月5日から発熱を繰り返していたが、唾液(だえき)が気管に入るなどする誤嚥(ごえん)を繰り返していたため、誤嚥性肺炎と診断。新型コロナの感染と分かった頃には他の複数の患者にも発熱があり、発熱者以外にもPCR検査で陽性患者が出ていた。湯浅院長は「予想していなかったような広がりが突然襲ってきた。集団感染が明らかになる前に大部分の感染が起きて広がっていたと推定される」とした。

入院の感染者、4割が死亡

 病院内では感染した入院患者109人のうち、4割が死亡。年齢は50~92歳だった。4月上旬に集中しており、血液疾患で入院中の患者が約半数、進行したがんの患者や、抗がん剤治療中の患者、複数の病気を抱える高齢者が多かったという。

 厚生労働省によると、6月19日時点で、全国の医療機関で103件の感染者集団(クラスター)が発生しているが、同病院は院内感染としては国内最大規模となった。その理由として湯浅院長は、入院をできるだけ断らないようにするために、同病院では血液疾患の患者を別の病気の患者と同じ病棟に入院させることがあったと説明。治療によって免疫が低下し特に注意が必要な血液疾患の患者に感染が広がり、死者の増加を招いたという。医師も複数の病棟を行き来することになり、感染拡大につながったとした。

 現在、同病院にはPCR検査陽性の入院患者はおらず、6月に入り外来・入院を再開している。湯浅院長は「スタッフの手指衛生の徹底や話をする時のマスクの徹底など、基本的な感染防御対策を取ることが一番大切だと実感した。検査体制の充実と合わせて徹底したい」と話した。

 医療施設の院内感染対策に携わる北海道医療大の塚本容子教授(感染管理)は、「病院は病気を抱えて感染のリスクが高い人が多い。また高齢者となると、日常生活の介助が必要になり医療従事者が濃厚接触しやすく感染が広がりやすい状況にある。常日頃から、患者には何らかの感染症があると思って対応する標準的な感染防護策を徹底することが重要。第2波に備えて、マスクや必要なガウンなどをそろえて、着脱の練習など職員の教育をしておく必要がある」と話している。

 同病院は、JR上野駅から近く、台東区の中核病院として400床の入院病床がある。救急患者の受け入れなどを行っていたが、院内感染発覚後、3月25日から外来・入院の受け入れを停止した。(月舘彩子、野口憲太)