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再考2020⑭
 新型コロナウイルスの感染拡大で東京オリンピック(五輪)・パラリンピックは1年延期となった。東京大会の意義はどこにあるのか。立ち止まって考えてみたい。

 日本オリンピック委員会(JOC)の会長室には、歴代会長の写真が飾ってある。初代会長は1911年に前身の大日本体育協会を設立し、講道館柔道を創始した嘉納治五郎師範だ。その存在を感じる度、私は背筋が伸びる心持ちになる。

 JOC会長に就任してから、いつも「師範ならどう考えるだろうか」と考えを巡らせてきた。嘉納師範が1912年ストックホルム五輪に選手を派遣したのは、スポーツを通じた相互理解の推進と、日本社会を心身とも豊かにしようとする気持ちからだった。時代が変わっても、その思いは変わらず私の中にある。

 東京オリンピック(五輪)が延期される前から、大会を一時的な「打ち上げ花火」で終わらせるのではなく、何を遺産に残せるか考えてきた。JOCとして選手の支援は大事だが、活力のある社会作りにスポーツがどう関わっていくかが極めて重要だと感じている。

 大会を通じて社会に浸透させたいのが「スポーツ・フォー・オール」の精神だ。私が選手だった時代、スポーツは苦しさに打ち勝つものであり、一部の若い競技者のためのものだった。しかし本来スポーツは自発的に行う楽しいものであり、老若男女、様々な障害を持った人を含めたすべての人たちのものだ。

 2017年にJOC選手強化本部長の任を受けた。就任後、多くの方にメダル目標を尋ねられたが、私は「東京五輪で結果を残すことが自分の仕事なのか?」と自問していた。JOCや国内競技団体が強化を進めることは当然のこと。ただ、スポーツの価値はそこだけではない。フェアで思いやりにあふれた社会を作るのにもっと貢献できるはず。色々な人が様々な形でスポーツに参加できる。東京五輪をそのきっかけにしたい。そのために関係団体と協力し、スポーツの社会的な価値、有用性を高めていきたい。

【動画】コロナ対策などで簡素化されることが決まった東京五輪。その姿とは?

 そう考えるきっかけは、198…

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