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 2月に済生会有田病院(和歌山県湯浅町)で新型コロナウイルスの院内感染が発生し、3月初めまで外来診療や救急の受け入れを停止するなか、陽性患者の受け入れと地域医療を担ったのは有田市立病院だった。同病院では感染に備え、1月から準備を進めていた。同病院感染制御室看護課長で対応にあたってきた吉田俊晴看護師(感染管理認定看護師)が振り返った。

 2月16日夕、県から有田市立病院に1本の連絡が入った。「新型コロナウイルスの陽性患者の入院を受け入れてほしい」。吉田看護師は、「ついに来たか」と気を引き締めた。

 1月中旬、国内で初めて感染者が確認されると、「遅かれ早かれ、和歌山でも感染者が確認される」とマニュアル作成に取りかかった。1月31日には湯浅保健所と合同で新型コロナ感染者の受診シミュレーションとして、検体の受け渡しや隔離の仕方などを確認した。吉田看護師は「感染が確認されてからバタバタしていたら医療が崩壊する。備えあれば憂いなし」と話す。

 2月13日、済生会有田病院で医師の感染が明らかになった。同僚医師、患者の陽性も判明。国内初の院内感染だった。

 そんななか、16日午後、数日前から発熱症状のある男性が有田市立病院の救急外来を受診した。直近、済生会有田病院への通院歴はなかった。それでも当直の内科医は「新型コロナかもしれない」と疑い、CT検査を実施し、肺炎像を確認。男性は別の医療機関に搬送され、陽性が判明した。「もし、普通の風邪と診断して帰していたら、地域にウイルスを広げていたかもしれない。1月から院内で新型コロナに関する呼びかけをしていたことで全てのスタッフに危機感を持ってもらうことができたのではないか」と吉田看護師は振り返る。

 2月17日、有田市立病院で陽性患者を受け入れた。看護師と患者が直接接触する機会を避けるため、体温や脈拍は患者自身で測定して用紙に記入し、室外に出してもらった。それを看護師が受け取り、患者の容体を把握した。

 さらに、17日からは「有熱者外来」を設置。発熱者に対し、駐車場に止めた救急車の中で呼吸器症状の有無の確認や体温測定などをしてから一般外来などに割り振るようにした。

 済生会有田病院で感染が確認された当初は、地元の診療所も診察がままならず、地域の人から「自分も感染しているのではないか心配」などといった問い合わせや来院が増えた。問い合わせを事務員だけに任せることはできず、多くのスタッフが通常よりも多くの事務作業に追われたという。「見通しの立たない、誰も経験したことのない状況は、まるで災害のようだった」

 これまで5人の陽性患者を受け入れた。なかには、6週間以上の長期入院をした患者もいたという。突然長い期間入院する患者の精神的な負担は大きいが、感染防止のため、接触は限定された。「会話で心理的な不安を和らげるのも看護師の役割だが、顔を見て話すことすらもできなかった」と振り返り、感染リスクを抑えつつ、いかに精神的なケアをするかを課題に挙げた。(西岡矩毅)