[PR]

 新型コロナウイルスの感染が懸念される中、災害時の緊急避難場所として老人ホームなどの高齢者施設を使うかどうか、対応が分かれている。「お年寄りに迷惑をかけてはいけない」と住民側が使用をあきらめるケースがある一方、入所者と避難者の動線を分けるなど準備している施設もある。

 ◆住民「お年寄りが心配」利用を断念

 広島市東区の上温品地区では2018年の西日本豪雨で、123人が高齢者施設に避難した。

 地区はもともと、小学校や福祉センターが危険な急傾斜地に近く、土砂災害時の指定緊急避難場所は一つもなかった。14年の広島土砂災害をきっかけに、危険な区域外にあった高齢者施設が緊急避難場所に指定され、さらに、18年度の県の基礎調査で土砂災害警戒区域に入らなかった集会所も緊急避難場所に加わった。

 しかし、地区の住民は今年、高齢者施設の使用をあきらめた。自主防災会連合会会長の上村一司さんは「新型コロナウイルス感染症にお年寄りがかかるのが心配で、こちらから申し出ました」と話す。

 もう一つの避難場所である集会所も、新型コロナ対策で「密」を避けるため、本来の収容人員の約半分の18人しか受け入れない予定だ。広島市は地区内に避難場所が足りない場合、隣の地区の避難場所を使ってもらう方針。上村さんは「集会所に入りきれない場合、隣の地区の温品小学校などに避難させてもらう」という。

 ◆課題は動線 分ける工夫も

 広島市内の別の地区では、高齢者施設側から使用を断った。

 避難場所として使うスペースと同じ階に高齢者と接する職員の更衣室があり、避難者と職員の動線が重なるためだ。施設を運営する社会福祉法人の理事長は「役所から補助金をいただいている施設として、避難時に使ってもらうのは当然のことと考えていたが、新型コロナでお年寄りが亡くなるのが怖い」と悩む。

 職員と避難者の動線を分けることで、避難場所開設に備える高齢者施設もある。

 広島市安佐北区安佐町鈴張の特別養護老人ホーム「こころ」。4月13日に県が新型コロナの感染拡大警戒宣言を出したのを受け、すぐに準備を始めた。

 避難者が来れば、玄関に入る手前で体調をチェックする。問題ない人は玄関脇のドアから、避難場所として使う1階の地域交流スペースへ。体調の悪い人は玄関内の風除室で待機した後、医療機関へ行ってもらう。

 地域交流スペースは職員の通り道にもなるが、避難者用の空間との間にびょうぶを立てて動線を分ける。災害備蓄品としてマスクや消毒液も準備している。

 副施設長の高田愛さんは「高齢者施設は日頃から感染症と闘っていて、頻繁に消毒もしている。正しく恐れ、正しく対応することを心がけています」と話す。(八田智代)