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 科学者による科学的助言を、政府は政策決定にどう活用すべきか――。政府による新型コロナウイルス対策では、専門家会議のメンバーによる助言の扱いが焦点になった。助言の扱いは、東京電力福島第一原発事故を始めとするさまざまな事件や事故を契機に、国内外で繰り返し議論されてきた。最新の研究成果やシミュレーションに基づくリスクの評価といった科学の知見は、危機管理の成否の鍵を握る。過去の教訓は今回、生かされたのか。(嘉幡久敬

 科学的助言は、科学と政治の間の架け橋に例えられる。科学が客観的データに基づいてリスク評価をして助言を行い、政治がそれを受けてルールや規範を作って実行する「リスク管理」を担う図式だ。

 だが1970年代以降、両者の分業は容易ではないことがわかってきた。例えば原発問題では、科学者は機器の故障が重なって大事故が起きる確率を見積もることはできても、どれほどの確率なら社会が原発を受け入れるかは判断できない。社会の価値観に線引きをすることになるからだ。こうした境界領域では、政策の選択肢を作る際に科学と政治の連携が必要になる。

 海外では、牛海綿状脳症(BSE)や遺伝子組み換え食品、地球温暖化などの問題をめぐって、科学的助言をめぐる議論が活発化した。

 日本では、2011年の東日本大震災の際の議論が代表的だ。震災に伴う東京電力福島第一原発事故では、住民の避難勧告や土地の除染、農産物の出荷制限などで、科学の知見をどう活用するかをめぐって社会は混乱した。科学技術振興機構(JST)は、英米などの先行事例も参考に、シンポジウムを開くなどして意見を集め、12年春に科学的助言のあり方をめぐる「原則試案」を公表した。科学と政治の関わり方の原則を示したものといえる。

 大阪大の小林傳司名誉教授(科学技術社会論)は、コロナ対策での、専門家会議による科学的助言をめぐる課題は、原則試案にすでに示されていたものだとみる。「震災の教訓が生かされたとはいえない」と話す。

 原則試案は13年、日本学術会議による科学者の行動規範に反映され、国の第5期科学技術基本計画(16~20年度)にも要素が盛り込まれた。だがその後、具体化に向けた政府の動きはない。

 小林さんは「原発事故の危機管…

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