ドムドムおじちゃん、47年ありがとう 閉店までのルポ

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大滝哲彰
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 「東海3県で唯一のドムドムバーガーが閉店する」――。ドムドムファンを自称する男性からそんなメールをもらった。訪れてみると、82歳のオーナーが夫婦で47年にわたって経営する店は、よくあるファストフード店とは違った「温かい」雰囲気に包まれていた。記者が閉店1カ月前、半月前、当日にそれぞれ店を訪れ、閉店までの物語を追った。

 「ドムドムハンバーガー桑名FC店」は、三重県桑名市桑名駅改札直結のビル「桑栄メイト」の2階にある。「ドムドムのおじちゃん」と呼ばれる太田勲さん(82)が、47年間この店を切り盛りしてきた。

閉店1カ月前

 閉店の約1カ月前の6月3日午後3時ごろ、初めて店を訪れた。店の入り口付近には、きれいに箱に詰められた食器や鍋が置いてある。「ご自由にお持ち帰りください」との貼り紙。断捨離の一環だという。いきなり心をつかまれた。

 店一番人気の「甘辛チキンバーガー」のセットを注文した。4人掛けの席に座って待っていると、オーナーの太田さんが自ら席まで商品を運んでくれる。「オーダーしてから待ってもらうのが、どうも落ち着かなくて。それで私が運んでいるんです」と太田さん。

 来店するお客さんは常連が多く、太田さんから話しかけている。「今日はソフトクリームにするかい?」。店前を通りかかった高校生にも手を振って「おかえり」「気をつけて帰るんだよ」と声を掛けていた。47年続いた「わけ」を知った気がした。

閉店まで半月

 閉店まで半月となった6月14日午前、入り口近くに置かれていた断捨離グッズはすでになくなっていた。この日は、「ドムドムファン」を自称する会社員土山元気さん(36)とともに訪れた。土山さんは、冒頭のメールをくれた張本人だ。月に2回ほど、同県伊賀市から車で1時間半かけて店に通ったという。「マスターの醸し出す温かさにほれこんでいます」と土山さん。

 店の看板やメニューを写真に収める人が目立った。スマートフォンで商品を背に自撮りをする女子高校生や、一眼レフカメラで様々な角度から商品を収める男性もいた。昼ごろになると、店前には最大1時間待ちという長蛇の列ができた。天井の低いビルの2階廊下には、ハンバーガーを楽しみに待つ子どもや大人の声が飛び交った。

閉店当日

 6月30日。午前10時開店のはずが、その1時間ほど前から店前には列ができた。

 予定より30分早めて開店し…

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