人類が半年前に知ったばかりのウイルスは、世界の1千万人以上に感染し、50万人を超える犠牲者を出している。災禍はどう始まり、どう広がっていったのか。感染の拡大が始まった中国・武漢を歩き、謎のウイルスの存在を捉えるまでの道筋や、ヒトヒト感染の認定に二の足を踏んだ中国の初期対応を検証する。連載「コロナの時代」の「パンデミックの序章」シリーズ第3回。
「感染症は魔物だ。魔物を隠すことはできない」
1月28日、中国国家主席の習近平(シーチンピン)は北京の人民大会堂で世界保健機関(WHO)事務局長のテドロスを迎え、こう強調した。
新型コロナウイルスの感染拡大で重要指示を出してから、習が最初に会った外国要人がテドロスだった。春節の連休中にトップが自らもてなした事実が、中国がテドロスの訪中をいかに重視していたかを物語る。
「中国は一貫して透明性をもって情報を提供している」と語る習に、テドロスも「中国の対応の素早さ、規模の大きさはまれに見るものだ」と持ち上げた。
中国衛生当局関係者はこの時のテドロス訪中について、「彼は訪中前、中国にとって大きな役割を果たしていた。習氏が出迎えたのは、そのねぎらいの意味もあった」と明かす。
中国を喜ばせたテドロスの役割とは何だったのか。
中国に甘い態度をとり続けたテドロス氏は、やがてその代償を払うことになります。記事後半で解説します。
新型ウイルスのヒトからヒト…

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