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 新型コロナウイルスに絡めて差別や中傷、嫌がらせをしないよう、佐賀市は先月26日、市内の大型商業施設で人権啓発のチラシを配って呼びかけた。佐賀県によると、感染した人や、患者に対応する医療機関の関係者らに対するこうした行為は、県内で少なくとも7件あったという。

 県内では3月13日から5月16日まで、延べ47人の感染が確認された。県は陽性が判明した人について匿名で、住んでいる市町、年代、性別を発表。感染判明前の2週間程度の行動などを説明している。

 県によると、感染した人の中には退院後、近所の人たちの目が気になって外出しづらくなったり、自宅や勤務先が特定されて会社や従業員が中傷を受けたりした人がいた。

 具体的に受けた言動では、畑作業をしていると「耕すな」と怒鳴られた▽車が壊された▽知人に会うのを拒まれた▽小学生から「ここはコロナの家」などと言われた――などがあった。県の担当者は「県内は都市部よりも住民の距離が密で、近所の異変がすぐに伝わる。うわさも広まりやすい」と指摘する。

 医療関係では、子どもが学校で嫌な思いを受けて登校できなくなった人や、差別を恐れてホテルでの宿泊を続けた人がいた。「コロナの患者が入院しているから行かない」などと言われた医療機関もあった。

 県内で感染が拡大していた4月、山口祥義知事は記者会見で「佐賀は慈しみの県。陽性になった人などを探して、非難するなどの行為はやめてほしい。そして公表に応じてくれた皆さんに感謝する。行動履歴を話してもらうことが、多くの人を救うことになる」と訴えていた。県弁護士会も5月、差別的言動などの人権侵害に反対し、思いやりを持った冷静な行動を呼びかける会長声明を出している。

 県内では1カ月半、感染は確認されていないが、いつまた拡大するかわからない。県の野田広・医療統括監は「ウイルスへの恐怖が差別や偏見、中傷につながっている。あってはならないことで、自分も同じ立場になりうると想像してほしい」と話している。(平塚学)