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 第102回全国高校野球選手権大会の中止に伴い開催される愛知県の独自大会が4日、開幕する。トーナメント方式で、序盤は地区ごとに対戦する今大会。東三河地区では、統合で来春学校がなくなる2校が初戦で対戦することになった。新城と新城東。両校の監督は今大会を「野球部の歴史を支えてくれた方々への恩返しの場」と位置づけ、学校最後の夏に臨む。(本井宏人)

新城 皆が望んだ単独チーム

 部員は9人。「試合中にもし1人倒れたらどうする」。独自大会開催が決まった5月下旬、新城の藤城賢監督(44)は、部員に問いかけていた。

 この春の異動で、新城有教館に転任した。特例で新城の監督を続けているが、悩みは部員数。中止になった春の県大会では、新城東作手と合同チームを組む予定だった。

 今の3年生部員は、入学当初は14人いたが、2年になると8人に減っていた。「最後の夏は合同チームかな」と考えていた矢先、父親が倒れて部活をやめた生徒が戻ってくれた。すると今度は、部員同士の仲たがいで1人がやめると言い出した。「みんなの前で言いたいことを言え」と促すと、1カ月後、「やっぱり野球がやりたい」と戻ってきた。

 学校最後の夏、単独チームか合同か、藤城監督はあえて部員に委ねた。「攻撃中も交代でコーチに入るので休めない」「熱中症で1人倒れたら、試合続行をあきらめるしかない」。様々な意見が出たが、半月かけて部員が出した結論は「9人で笑って終わろう」だった。新城東作手からも「助っ人部員を合わせて9人集まった」と連絡を受けた。

 「実は単独を選ぶのはわかっていた。地域もOBも望んでいたから」と藤城監督。秋からは新城有教館の陸上部顧問になる。

新城東 感謝を表す機会残った

 野球部しかいない放課後の校庭。「ほかの運動部は3年生の試合がなくなり解散した中、うちだけ続けさせてもらっている。幸せな話じゃないか」と新城東の安藤徹志監督(63)が9人の部員に語りかけた。

 再任用教諭として4月、新城東に赴任すると、校長から「野球部の最後を見届けてほしい」と頼まれた。

 新城東で6年前まで監督や部長を務めていた。若手教諭に後を任せ、野球から離れていたが、今年4月、その若手が入れ替わりで他校へ異動。「他にいないなら」と監督を引き受けた。だが休校が続いたため練習を見られたのは赴任直後の1度だけ。各部員の力量も適性もわからないまま2カ月が過ぎた。

 6月、練習を再開した部員たちは、明らかに体力不足だった。新城東は伝統的に強打が持ち味で、夏の愛知大会でベスト8の経験もある。1カ月で立て直したいが、無理をしてけが人が出るのが最も怖い。

 部員たちは、9人で学校最後の夏を飾ろうと1年生の時から励まし合ってきた。とはいえ、野球を続けられたのは、父母やOBたちが支えてくれたから。

 「甲子園にはつながらなくても、独自大会で感謝を表す機会は残った。それを手伝いたい」。部員たちとのかけがえのない1カ月余が過ぎれば、今度こそ本当に監督生活を終える。

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 4日に開幕した夏季愛知県高校野球大会(愛知県高校野球連盟主催、朝日新聞社など後援)は、新型コロナの感染拡大を防ぐため、全試合が原則無観客で行われる。スタンドに入れるのは試合のあるチームの控え部員と部員の保護者に限られ、一般の入場は禁止されている。県高野連は球場周辺に近づくこともやめるよう呼びかけている。