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 コロナ禍の中、本の世界と親密になった人も多いことだろう。毎年1月と7月に発表される芥川賞・直木賞の舞台裏を明かす『芥川賞 直木賞 秘話』(青志社、今年1月刊行)は、「誰もが知っている賞の、誰もが知らない話」(あとがき)に満ちている。

 筆者は、島根県益田市出身の元「文芸春秋」編集者、高橋一清(かずきよ)さん(75)。早稲田大を卒業後、文芸春秋で38年間編集者をし、社内にある日本文学振興会で芥川賞・直木賞の選考に関わった。作家からは「いっせいさん」と呼ばれ、交わした手紙や、日常をメモした手帳が著書の材料になった。

 同人誌を含めて候補作を選んで社内選考委員会で下読みを重ねた。料亭で選考にあたる作家らの生々しいやりとりや芥川賞の原稿の分量をめぐる激論に触れると、選考の厳正な審査ぶりがわかるだろう。

 高橋さんは、世間の評判が一時芳しくなかった芥川賞の、選考委員を入れ替え、社会の注目を浴びる流れに変えていった。物故者、存命の作家が多数登場するが、一夜で時の人となる一方、残酷な一面も。高橋さんは、直木賞の選考委員の作家からこんな話を聞かされた。委員のもとに候補作の作家の妻が訪れ、「なんでもする」と夫の受賞を懇願したのだという。

 受賞を伝える時のやりとりから受賞者の服装、正副賞、パーティーの準備や出没する「招かれざる客」、増刷の心得まで話題は多岐にわたるが、作家の「生の顔」がやはり魅力的だ。

 無頼なイメージのある中上健次…

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