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そして父になる 「一家心中」も考えた息子との4年間

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アピタル編集長・岡崎明子
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 妊婦の血液を調べ、胎児に異常がないかをみる新型出生前診断。赤ちゃんがダウン症だとわかった親の9割近くが中絶を選ぶ中、検査を受けられる施設は今後、さらに増える方向だ。3歳9カ月のダウン症の息子、十五くんを育てる西村淳一さん(46)も、子どもが生まれる前は、当事者から「幸せ」と聞いても信じられなかったという。いま、心から「十五の笑顔をみると幸せ」と言う西村さん。この4年間に、何があったのだろうか。

待合室で「不幸な家族になる」

 2016年9月。医師から渡された紙には、99%以上の確率で我が子がダウン症であると書かれていた。羊水検査の結果、21番目の染色体が3本あった。

 「その瞬間、鉄の塊で頭を押さえつけられたような衝撃を感じました」

 小さいうちはいいかもしれない。でも大きくなって手をつけられないぐらい暴れる子になったら? 自分で自分を傷つけるような子どもだったら? 今なら、そんなことは絶対にないと言える。でも当時は、何も知識がなかった。診察を終え、待合室のソファに座りながら「我々は不幸な家族になる。一家心中するんだろう」という思いが頭をよぎった。

 不妊治療の末、ようやく授かった我が子だった。妻は40歳で妊娠。妊娠12週のとき、「念のために」と医師から出生前診断の説明を受けた。

 妊婦の年齢が上がるほど胎児に染色体の異常が出る確率も高くなり、40歳の場合、約100人に1人の赤ちゃんはダウン症で生まれる。その病院では新型出生前診断は受けられないが、受けたいなら別の病院を紹介するという。

 一方で新型出生前診断は異常の可能性を示すだけで、確定診断には羊水検査を受けなければならない。その場合、300分の1の確率で流産するという。それにたとえダウン症だとしても、母子ともに命の危険はない。そう医師から聞かされ、「我が子がダウン症でも、受け入れよう」と、検査を受けない選択をした。

ネットでエコー写真を検索

 おなかの赤ちゃんはすくすくと成長し、妊娠の経過は順調だった。だが妊娠30週を過ぎ、エコー検査で十二指腸閉鎖が見つかった。医師によると、十二指腸閉鎖はダウン症の子によくある病気で、30%の確率でダウン症かもしれないという。だが「自分たちは70%に入る」と信じていた。ネットでダウン症の胎児の顔の特徴を示すエコー写真をみつけ、我が子のエコー写真と見比べて「やっぱり違う」と安心した。

 出産が近づくにつれ、十二指腸閉鎖の影響で赤ちゃんがうまく羊水を吸収できず、羊水の量が異常に増えていった。おなかに針を刺して羊水を抜くことになった。「どうせ羊水を抜くなら」。羊水検査を受けたのは、「ついで」だった。

新型出生前診断

2013年から始まった新型出生前診断。これまでに7万人以上が受け、おなかの赤ちゃんがダウン症だとわかった妊婦の9割近くが中絶しているという現実があります。日本産科婦人科学会は検査が受けられる施設を広げる方針を示していますが、西村さんは必ずしも反対ではないと言います。記事の後半では、「十五」という名前に込めた両親の思いが明かされます。

 その結果が、医師から渡され…

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アピタル編集長・岡崎明子
アピタル編集長・岡崎明子(おかざき・あきこ)
科学医療部記者。広島支局をふり出しに、科学医療部で長く勤務。おもに医療、医学分野を担当し、生殖医療、がんなどを取材。特別報道部時代は、加計学園獣医学部新設問題の取材で日本ジャーナリスト会議(JCJ)賞を受賞。オピニオン編集部デスクを経て、2020年4月からアピタル編集長。