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スポーツ好奇心

 高校野球経験者にとって、試合よりも、練習中の何げない一コマの方が思い出深いという人も多いだろう。福岡県の球児だった私もその一人。そんな高校野球の日常を再現した動画「野球部あるある」を公開しているお笑いコンビがいる。動画の総再生回数は1億回を突破。人気の理由は、思わず「あるある」とうなずいてしまう再現力にある。

 「練習の最後べーランあるか気になる雰囲気」「監督の車のナンバー覚えてるやつ」……。野球経験者ならニヤリと笑って共感してしまう「野球部あるある」を撮影した動画で人気を集めているのが、お笑いコンビ「ダンビラムーチョ」(吉本興業)の大原優一さん(30)と原田フニャオさん(31)だ。

 2010年にコンビ結成。山梨県出身の大原さん、長野県出身の原田さんとも元高校球児だったことから、趣味感覚で13年から動画投稿を始めた。今ではチャンネル登録者数約11万人、動画1本の再生回数は5万~10万回を数える。

 主な撮影場所は河川敷のグラウンド。使うグラブは実際に高校時代に使用していたものだが、バットは「重い」などの理由でプラスチックのカラーバットだ。撮影場所の最寄り駅までは電車で向かうが「カラーバットを持って電車に乗るのが恥ずかしい」と大原さん。知人に撮影役を頼み、1日約20本を2~3時間かけて撮影する。

 後輩を応援する気持ちも込めて母校のユニホームを着ることも多い。だが、テーマに「弱小野球部」を取り上げることも多いため、原田さんのSNSには母校の現役部員から「いつも見ていますが、他校からなめられるので着ないで下さい」とのメッセージが届いたという笑い話もある。

 人気の動画の一つが「休み時間に少しはしゃいだだけなのにエグいこという監督」だ。野球部員役の原田さんが休み時間にはしゃいでいるのを見つけた監督役の大原さんが「部活の時はあまり声を出さないのに」とたしなめる。その上で「あなたを夏の構想から外します!」と突然「戦力外」を通告する。動画のコメント欄は「こんな監督いたわ」と書き込みで盛り上がった。大原さんは「視聴者が体験した『あるある』を書いてくれて、コメント欄が動画をおもしろくしてくれている」。

 ネタの源泉は高校時代。芸人らしく、おもしろいエピソードがある。

 部員不足に悩まされた大原さん。2年秋の新チーム発足後に部員がインフルエンザにかかった。引退した先輩に練習試合への出場を頼んだところ、その先輩は張り切って捕手で出場した。「なぜか超中核のポジション。普通は外野とかでしょう」

 原田さんは長距離走のタイムが遅すぎるあまり、たばこを吸っているのではないかと疑われたことも。「父が喫煙者だったので『副流煙で体力落ちてんのか』とか。何なら『お前も吸っているんじゃないか』といじられました。純粋に僕の体力がなかっただけです」。今でこそ弱小出身をネタにするが、2人とも当時は真剣に野球に打ち込んだ。だからこそ、今夏の選手権大会中止には心を痛めている。

 大原さんは2年生まで公式戦で1勝もできなかった。だが、二塁手として出場した最後の夏で2勝した。3回戦も1点リードして九回2死三塁の守り。「絶対飛んでくるな」と念じていたが、飛んできたゴロをはじいて同点に。延長で敗れた。当時は「お前のせいじゃない」と慰められた。今は「お前のせいだろ」といじられるという。「その方がありがたい。何でも言い合える仲間を得られたということですから。(甲子園がなくなった)高3のみなさんにも、そう感じられる瞬間が来てほしいですよね」

 養成所に入るため、遊園地で1年間アルバイトをして学費を稼いだ苦労人でもある2人は、18年のM―1グランプリで準決勝に進出。次に目指すのはM―1決勝の舞台だ。今はお笑いの世界で「甲子園」を目指している。(河野光汰)