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 大雨や台風などの災害発生時に備え、県内の自治体が避難所での新型コロナウイルスの感染防止対策を急いでいる。宮崎市のNPO法人「みんなのくらしターミナル」代表理事の初鹿野聡さん(58)は「コロナ禍にあっては車中泊避難も『ニューノーマル(新しいありよう)』の一つ」と提唱し、避難のあり方も従来とは異なる発想が必要だと訴える。

 災害が起きたとき、多くの住民が集団生活を送る屋内の避難所は密閉・密集・密接の「3密」状態になりやすい。クラスター(感染者集団)を生む危険性も高まる。密を避けるため、避難所の収容人数も制限されることが予想される。

 「車中泊避難を選択肢の一つにすれば、避難所に入れなかった人の次の避難先へのつなぎになる。避難所を高齢者やケアが必要な人に優先するための手立てにもなり、分散避難が具体的なものになる」

 その発想は2016年の熊本地震の際、被災者支援に向かった熊本県益城町や西原村の避難所での教訓があるからだ。玄関ホールや廊下まで人であふれ、「多くの人が車中泊を余儀なくされたが、あえてプライバシーが守れる車中泊を選んだ人も少なくなかった」と振り返る。

 狭い空間で長時間同じ姿勢を取ることでエコノミークラス症候群も懸念されるが、「車は移動できるので人混みを避けた所に行って運動もできる。座席をフラットにし、水分補給を心がければ軽減できるのではないか」。地方は車社会で、2台以上の車を持つ家庭も少なくない。指定避難所で車中泊を受け入れる態勢を整えれば、自治体が避難者の支援や状況把握をしやすいと考える。

 4月下旬、こうした考えを自身のフェイスブックで発信すると、河野俊嗣知事や宮崎市の戸敷正市長から「いいね」が届いた。

 車中泊避難を唱える声は各地で広がっている。避難行動を研究するNPO法人「CeMI環境・防災研究所」(東京)のインターネット調査によると、新型コロナで避難行動が変わると答えた人のうち、複数回答で避難方法を聞くと「車中泊避難」が42%で最も多く、「避難所に行くが、様子を見て避難先を変える」が39%だった。実際の避難時に、車中泊を選ぶ人が一定数想定されることがわかった。

 日南市生まれ。1980年に警察官を拝命し、宮崎県警で贈収賄や選挙違反などの知能犯の捜査を扱う捜査2課が長かった。96年に退職し、PTA活動をきっかけに地域づくりにかかわり、2008年に「みんなのくらしターミナル」を設立。中山間地の地域おこしや教育、災害などの問題と向き合い、人と触れ合うことでつながれる強さを実感した。

 災害時、コロナ禍とどう向き合うのか。「みんなで知恵を出し合い、つながりを切らないような工夫をすることが大切。警察官の時と変わらない気持ちで活動を続けていきたい」(二宮俊彦)