中島美鈴
なぜ、わが子は宿題を後回しにして遊んでしまうのか。これには原因があるようですが、紙とペンがあれば解決もできそうです。今日からできる方法を、臨床心理士の中島美鈴さんが解説します。
みなさんは夏休みの宿題をさっさと終わらせる派でしたか? それとも最終日に半べそかきながらする派でしたか? 大人になってからは、大掃除に衣替え、庭の草とりに書類作成などやるべきことがあとまわしになっていませんか?
子どもが宿題をすぐにせず、目の前のテレビやゲームに夢中になってしまう心理、大人にもわかりますよね。みなさんが人生の途中からすぐにやるべきことをやる「てきぱきさん」になってきた変化を体験されているとしたら、それはどんなきっかけでしたか?
きっと大人になるまでに、「ぎりぎりでひどい目にあった」「あとまわしにして忘れてしまって、周囲に迷惑をかけた」「子どもを産んで忙しくなり、あとまわしする場合じゃなくなった」など様々な理由があることでしょう。
一方、子どもにはそうしたひどい目にあった経験も、周囲に迷惑をかけた経験も、忙しくなった経験も圧倒的に不足しています。子ども自身がこれらの経験をするまで待つという子育て方法もあるでしょう。しかし、今の学校は、圧倒的なマンパワー不足。コロナ休校の影響もあって、宿題に関して親の果たす役割は昔に比べて増えているんです。「子どもの宿題なんて放っておけ」と言いたくなりますが(実は私はこの考え方なんですけどね)、はっきり先生方からは親のサポートが求められています。
ではどうするか。
目の前の快楽>長期的に役立つ宿題
こうなっていることを子どもと話しましょう。そして、この不等号をどうにか反対にすることで、子どもにとって何かよいことがあると理解させるのです。
リョウ「ママさ、ほんとは夕ご飯のお茶わん洗いも風呂も好きじゃないのよ」
娘「え?そうなの?」
リョウ「だからさ、ママ、お茶わんそのままにして、風呂入らず寝ていい?」
娘「汚いでしょ」
リョウ「だめか。だめか」
娘「そんな汚い家いやだし、ママが汚いの嫌だ」
リョウ「だから嫌なんだけどさっさと終わらせるんだ。どっちのママがいい?」
娘「風呂入ってほしい」
リョウ「だよね。いや、風呂入らないわけじゃないんだけど、あとでいいやってうたた寝したくなるだけなんだよね」
娘「でもやだー」
自分のことより人のことの方が理解しやすいものですよね。娘がこう言えば話が早いのです。「やっぱりやるべきことは先にやるのが気持ちいいよね」って共有できると強いですよね。
また、すぐしない子どもの中には、「宿題にいつ、どのぐらい時間をかけられるのか、生活時間全体の見通しが持てない」ことが原因の子どもも多くいます。小学1年生の子どもが体感として把握できる時間は10分くらい。長くても授業時間の45分です。帰宅するのが午後4時で、寝るのが9時としたら、子どもにとって5時間は、「お!まだ5時間もある。たくさん時間がある!」なんです。大人にしてみれば、「あーー忙しい!その5時間の間に宿題させて、夕食作って食べて片付けて、風呂入れて髪乾かして、洗濯回して、明日の準備して・・・・」と見通せるわけです。しかし子どもはこれからのやることにどのくらい時間がかかって、自分が本当に自由に使える時間が実感できていません。
拡大するイラスト・中島美鈴
こんな時間表を作り、可視化すると理解しやすいでしょう。
娘「えーーー!私ってあんまり自由がないじゃん」
そうよ、そのとおりなのよ。だからこそ、さっさとやること終わらせて、自分がしたいことに時間を使おうよと誘導しましょう。
1978年生まれ、福岡在住の臨床心理士。専門は認知行動療法。肥前精神医療センター、東京大学大学院総合文化研究科、福岡大学人文学部、福岡県職員相談室などを経て、現在は九州大学大学院人間環境学府にて成人ADHDの集団認知行動療法の研究に携わる。他に、福岡保護観察所、福岡少年院などで薬物依存や性犯罪者の集団認知行動療法のスーパーヴァイザーを務める。
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