拡大する写真・図版イラスト・中島美鈴

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 宿題を後回しにして、ついついテレビに夢中になっている。子どもがいる親の悩みの一つです。ケンカにならず、わが子が進んで宿題にとりかかる。そんな方法を、臨床心理士の中島美鈴さんが解説します。

子どもが宿題を後回しにする三つの可能性

 小学生になった子どもを持つ親のお悩みのうち、「宿題言わないとしない問題」は代表的です。つまり、親が「ねえ、宿題やったの?」というまで、子どもは宿題を忘れているか、テレビやゲームに夢中かで手をつけていないのです。親としては「こんなこと毎日言わなくちゃいけないの?」とうんざりですね。

 リョウさんの娘も、まさに宿題のことが頭にないタイプです。学校から帰るとすぐにテレビをつけてソファに寝転びます。撮りためたアニメ番組の世界で頭がいっぱいです。リョウさんは夕食の支度をしながら、イライラしています。「あの子、またああやって。どうしてやるべきことを先にしないのかしら。」リョウさんは台所から娘に言います。

 リョウ「宿題やったのーーー?」

 娘「あとでー」

 このやりとりを3回ほど繰り返す頃には、リョウさんはイライラを爆発させます。テレビのリモコンを取り上げて、テレビ消してから娘の前に仁王立ちになります。

 リョウ「何度言ったらわかるの!!!!いい加減に宿題しなさい!」

 こんな毎日にうんざりしています。

 リョウさんの娘が宿題をせずにテレビざんまいになっている背景を分析しましょう。

 可能性としていくつか挙げてから、検証してみるのです。

 ①宿題のあることを忘れている

 ②宿題をしないとどうなるかを知らない

 ③宿題がどう役立つのかを知らない

 こんなところでしょうか。

 一つずつ娘さんに聞いてみますよ。①の宿題忘れた説です。もちろんテレビは消して。

 リョウ「ね、宿題のこと忘れてるの?」

 娘「忘れたわけじゃないけど」

 そういえば思い返してみると、週末思い切り遊んだ後の娘は、日曜日の夜になって「あ!宿題のドリル、学校に忘れてきた」と思い出したこともありました。そう。遊んでいる間には、宿題のことを忘れているのかもしれません。で、遊びが終わって初めて思い出すのでしょう。(まあ、世間ではこれを“忘れている”というのでしょうけど)

 ここから見えてきたとるべき対策は「帰宅後すぐに宿題のリマインダーが必要」ということですね。帰宅時間に合わせてアラームを設定するのもよし、帰宅後手洗い→おやつ→宿題とルーチンにしてしまうのも低学年からできるとベストです。

 続いて②「宿題をしないとどうなるかを知らない」問題です。

 リョウ「ね、テレビみながら“あー宿題あとでしなくちゃなー”とかモヤモヤしない?」

 娘「全然」

 ですよね。忘れているんですものね。「試験前で勉強したくなくて、それでも逃げたくて現実逃避でゲームしてた」ような中高生とは違うんですね。小学1年生らしい回答ではあります。娘さんは、リョウさんがこれまで宿題をつきっきりでみてあげていたため、まだ宿題を忘れたらどんな結果が待ち受けているかイメージがわかないのかもしれません。ただ、同じクラスで宿題を忘れた他の子どもが、先生に叱られているところは見たことがあるようです。“宿題を忘れたら先生に叱られる”という認識はありそうです。でも、前述したような「すぐしないと、ドリルを学校に忘れているなどの不測の事態に対処できない」というところまでは想像ができていないようですね。ここは人生経験が少ないので仕方ないですが、子どもにイメージをもたせることで、“なぜすぐしなくてはならないか”を理解できるといいですね。

宿題をすると、どんないいことがあるかを伝えてみる

 最後に、「③宿題がどう役立つのかを知らない」問題です。

 親の自分だって、「この宿題が人生にどう役立つか」を小学1年生にわかりやすく伝えるの、なかなか大変ですよね。でも我が子が「先生に叱られたくないから渋々宿題をやる」のだとしたら、なんだか残念だと思いませんか? 宿題に費やす時間とエネルギーはなかなかなものです。どうせなら「そっか!このドリルしたら計算が速くなってかっこいい」みたいに前向きに取りかかれるといいですよね。どう役立つかを教えることに関してですが、これは小学1年生に通じるように教えるのは苦労します。私は以前息子が、パズルのような問題を解いていて、複数の空欄を目の前にして“どこから解けばいいんだーー”とパニックになっていたときに、ここぞとばかりに数学を学ぶ意義を説明したことがありました。

 私「数学って、あれもしなくちゃ、これもしなくちゃ、わーーどうしよう!ってパニックになったときに、落ち着いて、順に一つずつどれから解決していけばいいかなあってするために学ぶんだよ」

 結果、息子には全然通じませんでした。試行錯誤ですね。この説明ですと、小学5年生以降向きかもしれません。それに息子にとってまだ人生で「あれもしなくちゃ、これもしなくちゃ」という場面の体験がなかったのでピンとこなかったのかもしれません。抽象的すぎてだめでした。

 「計算速いとかっこいいやん。クラスで1番になりたくない?」

 「文を読む力がつくと、相手の気持ちがわかるようになる。友達増えるよ」

 みたいなかんじでいかがでしょうか? 競争心の強い子どもには前者が。お友達と仲良くしたいという社交的な子どもには後者が響くでしょう。子どもの好きそうな結果をくっつけてあげて説明します。

 ヒントになっていましたか? 今回は宿題を思い出して、やる気を引き出すところまででした。次回以降はそれでもあとまわしにしてしまう宿題問題、時間内に終わらない問題へと続きます。

 コラムの筆者・中島が時間管理×人間関係をテーマに、7月31日(金)「女性のための夢を叶える時間術セミナー」をオンライン開催します。詳細はこちらから。

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中島美鈴

中島美鈴(なかしま・みすず) 臨床心理士

1978年生まれ、福岡在住の臨床心理士。専門は認知行動療法。肥前精神医療センター、東京大学大学院総合文化研究科、福岡大学人文学部、福岡県職員相談室などを経て、現在は九州大学大学院人間環境学府にて成人ADHDの集団認知行動療法の研究に携わる。他に、福岡保護観察所、福岡少年院などで薬物依存や性犯罪者の集団認知行動療法のスーパーヴァイザーを務める。