新型コロナウイルスの感染拡大により、ひとけのなさを突いた盗みが増加するなど、各国の犯罪傾向に変化が起きている。在宅での仕事や生活時間が増えたことが影響したとみられ、感染の不安につけ込んだ詐欺やサイバー犯罪も懸念されている。(ニューヨーク=藤原学思、ヨハネスブルク=石原孝、ジャカルタ=野上英文)
消えた人の気配、増える不法侵入
「薬局への侵入で、8千ドル(約85万円)以上の処方薬が盗まれた」。米ニューヨーク(NY)市の警察は6月17日、公式ツイッターで防犯カメラの映像を公開し、情報提供を呼びかけた。映像には入り口が破られ、十数人が次々に押し入る様子が記録されていた。
市警によると、同28日までの今年の統計では、不法侵入が前年より2242件(46%)、自動車盗は1292件(61%)増えた。新型コロナに加え、ミネアポリスで白人警官が黒人男性を死なせた事件後に一部の市民が暴徒化し、夜間外出禁止となったことも反映されているとみられる。
感染が爆発的に広がったNY市では3月からレストランやバーでの飲食が禁止となり、在宅勤務が義務づけられた。一時は地下鉄の乗車率が1割弱になるなど、人出が大きく減少。経済活動は一部再開したが、3カ月以上にわたって多くの店舗が閉まった上、空き家や利用の無い車も増え、犯罪者の標的になった。
警察トップが2年前に「犯罪状況は戦場に近い」と語った南アフリカ。3月下旬に全土がロックダウン(都市封鎖)され、殺人などの「重大犯罪」の件数が5割以上減った。一方で、外出制限などの違反を見逃す代わりに1万2千ランド(約7万5千円)の賄賂を支払うよう要求したとして治安部隊の隊員が逮捕されたり、閉店中の酒屋や休校中の学校の備品を狙った略奪が起きたりした。
警察省によると、外出制限が緩和されるにつれて、殺人などの犯罪件数は増加傾向にある。中央銀行は、ロックダウンや経済の落ち込みから、37万人以上の雇用が失われると予測。治安当局は、困窮や不満が原因の犯罪が増える恐れがあると指摘する。外出時のマスクの着用が義務化されたため、犯罪者の特定も難しくなっているという。
国際刑事警察機構(ICPO)は4月、在宅者が増えたため無人となる工場や店舗が標的となっていることや、配偶者などからの暴力(DV)、児童虐待が増加傾向にあることを示す調査結果=表=を発表。「世界人口の3分の1が閉じこもったことで、変化が見え始めた」と警鐘を鳴らした。
広がる受刑者釈放の動き
新型コロナの集団感染を心配…

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