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 路上生活を送る人にも一人一律10万円の特別定額給付金を届けようと、支援者らが知恵を絞っている。

 6月中旬、金沢市役所1階の窓口を、路上生活者の50代男性が訪れた。

 路上での生活は約20年になる。兄に頼まれたのをきっかけに借金を重ね、自宅に居づらくなって両親らと暮らしていた市内の家を出た。家族と連絡をとらず、父が亡くなったことはこの冬、新聞のお悔やみ欄で知ったという。

 建築現場などで働いたこともあるが、仕事を任されるようになると、重荷を感じて自ら遠ざかった。現金収入はない。廃棄されたけれども、まだ食べられる物を探しているという。パンやバナナが続くこともあり、栄養バランスはとれない。

 図書館で本を読むのが好きだが、新型コロナウイルスの影響で、図書館が長時間滞在しないよう呼びかけるため、行きづらくなったという。その新型コロナを巡って国が一律給付を決めた10万円についても知っていたが、もらえるはずがないと諦めていた。

 そんな男性に、路上生活者の支援をする「かなざわ夜回りの会」のメンバーが声をかけた。10年以上活動している金沢市議の森一敏さん(61)は「路上生活をしている人たちこそ給付金を必要としている」。

 総務省によれば、4月27日時点で住民基本台帳に登録されている人が、自治体に申請して受け取る仕組み。申請書類は世帯主宛てに郵送される。郵送で申請する場合は本人確認書類を添付しなければならない。窓口に持参する場合も運転免許証やマイナンバーカードなどによる本人確認が求められる。

 森さんらが市に問い合わせたところ、男性の住民登録は市内にあった。だが、免許証などは一切ない。

 森さんは市の担当者と話し、会のメンバーの立場で書いた「本人と確認します」という書面を提出。この「本人保証書」を市側が本人確認書類と見なすことになった。

 森さんは男性の申請にも付き添った。手続きを終え、男性は言った。「雨の多い時期は、体を拭いてもべたべたする。お風呂に入ったり、コインランドリーで洗濯したりしたい」

 富山駅近くで路上生活者に炊き出しをする「グループ駅北食堂」代表で富山市の堀江節子さん(72)も、知り合いの男性の申請を手助けしている。各地の事情を知ろうと、支援者や研究者でつくるメーリングリストで呼びかけた。

 森さんから本人保証書の作成や、知り合い宅に住まわせてもらい住民登録した例の紹介があり、堀江さんも男性が住民登録できるよう手伝った。「隣で実例があると勇気づけられる」と話す堀江さんだが、「支援者や団体とつながっている人はいいけれど、そうでなければもらえないままの人もいるかも」と心配する。

 「国は路上生活者も給付金がもらえるようにというスタンスで取り組んでいる。ただ申請のハードルは高い」と指摘するのは、北九州市の認定NPO法人抱樸(ほうぼく)の常務山田耕司さん。

 市の委託を受けて運営する、路上生活者に一時住まいを提供する自立支援センターのセンター長も務めている。市外に住民登録している路上生活者のため、当該の自治体と交渉して申請書を送ってもらい、センター長として一筆書く段取りをつけたという。10万円は為替で送ってもらう予定。

 山田さんは「住民登録を要件にしたり、世帯単位にしたりすると受け取りにくい人たちがいる。個別の事情を丁寧に聞き、柔軟に対応してもらいたい」と話す。(沼田千賀子)