【動画】球磨川沿いの国道219号は大規模に崩落していた=恵原弘太郎撮影
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 記録的豪雨で17人の死者が出た熊本県人吉市では、電話がつながらないなど通信障害が出て被害状況の把握が難航している。捜索を急ぐ警察や消防、自衛隊は氾濫(はんらん)した球磨川流域の住宅を1軒ずつ回る「ローラー作戦」に着手。市内では6日夜時点で2人が行方不明のままで、他にも救助を求める人がいないか懸命の活動が続く。

 6日午前11時過ぎ。球磨川沿いにある人吉市下薩摩瀬町の住宅街に熊本県警の警察官約15人が集まった。ヘルメットをかぶり、「緊急災害警備隊」と書いた黄色いビブスも着用。数人ずつに分かれ、下流方向の住宅に歩き始めた。

 あるグループは、豪雨被害は見て取れない平屋の前に立った。敷地に入り、ドアの前に立って呼び鈴を押す。応答はない。

 「こんにちは。熊本県警です」「いたら返事して下さい」。返事はない。周囲に人の姿もないのを確認すると、「外済」と書かれた粘着テープを取り出して郵便受けに貼った。外からしか調べておらず、さらに確認が必要という意味だ。

 別のグループが向かったのは土砂が流れ込み、扉や窓が開けっ放しの木造平屋。人の気配はない。「入りますよ」。そう声をかけると数人が家の中に入り、2分ほど見て回った。

 辺りには土砂を片付ける住人も。「隣の人、逃げたかわからんですよね」。警察官が声をかけると、住民は「避難所にいっとるよ」「片付けに来とった」。途中、近くの住民だという女性が駆け寄ってきた。「私たちでは運べないので手伝ってもらえませんか」。警察官の1人は「人命の救助が優先なので……」と心苦しそうに答えた。

 総務省によると、熊本県南部を中心に通信支障が発生しており、7日午前7時現在も電話が使えなかったり、つながりにくかったりする状態が続く。1戸ずつ見て回るのは、電話などによる安否確認が難しいことも理由の一つだ。

 対象は球磨川流域の約6キロにわたる約5600世帯。警察、消防、自衛隊が五つのブロックごとに分担している。5日には、岸辺に倒れていた心肺停止状態の男性を発見した。7日は初めて災害救助犬も投入し、数百人態勢で臨んでいる。市幹部は「一刻も早く見つけ出してもらいたい」と話す。(神野勇人、松本江里加)