「キッチン南海」の黒いカレー 最終日にそれぞれの思い
若井琢水
古書店街で知られる東京・神田神保町のすずらん通りで、60年の歴史を持つカレーの名店が幕を下ろした。洋食屋「キッチン南海」。6月26日の最終日には、それぞれ特別な思いを胸に、多くのファンが長い列をつくった。
創業者の南山茂さん(90)はこの日、いつもと変わらず朝6時台に店に入った。厨房(ちゅうぼう)を離れて久しいが、早朝にカレーの鍋を火にかけるのはずっと、南山さんの役目だ。
午前11時過ぎ。客が入り始めると、南山さんはカウンター席の端で、注文された品を示す色札の仕分けを黙々とこなす。材料の肉が足りなくなると、原付きバイクにまたがって買ってくる。
南山さんは1960年、東京・飯田橋に「カレーの南海」を開店した。いまの場所に移ったのは66年。マージャンが人気だった当時、近くに軒を連ねた雀荘(ジャンソウ)に「マージャンしながら食べるのにカレーはぴったり」と売り込み、出前で人気を集めた。マージャン人気が下火になると出前はやめたが、古書店街を訪れる学生や会社員らに愛され続けてきた。
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